>>(上)より続く

 妻の帰りをずっと待っていた優さんにとっては急転直下の展開でした。なぜなら、妻から何の前触れもなく「縁切り」を宣告されたのだから。「あのマンションには帰らないわ、荷物はそっちで処分しておいてよ、子どもには会わせるつもりはないから……」。このように「縁切り」とは妻だけでなく、わが子にも今後、会えないことを意味するのです。

 ここまでの話を聞いて、私はようやく優さんの言う「種馬」の意味が分かってきました。種馬とは、妻が優さんに求めていたのは精子だけで、夫としての役割、父親としての役割を期待していない……つまり、「精子の提供者」としか見られていないことに対する憤りを表した言葉だったのです。

 もしかすると妻は今までずっと「どうやって別れるか」を考えに考え、用意周到に準備をしてきたのかもしれません。一方、優さんはどうでしょうか?こんなことになるとは全く予期しておらず、完全な不意打ちでした。優さんの希望は「やり直したい」、妻の希望は「別れたい」。お互いの希望は水と油であり、混じり合わないのは当然といえば当然です。

 当時の優さんは半ばあきらめていました。すでに何度となく妻に対して「考え直してほしい」と伝えたのですが、妻の反応は「話すことなんてないわ」「早く別れてよ」「ちゃんと払うものは払って」の一点張りだったからです。しばらくすると優さんは渋々、離婚を受け入れることにし、お金のこと(出産費用や養育費)に気持ちを切り替えざるを得ませんでした。

実家に戻り、音信不通になる妻がとる
非常に多いケースとは?

 私の頭にハッとよぎったのは、優さんの財産です。なぜなら、今回のように喧嘩別れをし、実家に戻り、音信不通になるという流れを辿る場合、妻が夫の財産を持ち逃げするケースが非常に多いのは経験則で分かっていたからです。

「家計はどちらが管理していますか?通帳や証券は?」

 私は慌てて優さんに尋ねたのですが、優さんによると家計は優さんが管理しているけれど、メインバンクの通帳は妻が持っているということ。私は嫌な予感が的中しないことを祈りつつ、優さんに取り急ぎ、「インターネットバンキングで口座の中身を確認してください」と伝えたのです。そして優さんは私に言われた通り、電話をいったん切った後、携帯を使って銀行のページにログインしたのですが、そこには目を覆いたくなるような画面が映し出されたのです。