若手が同期会をやりたがるのにはわけがある
――ホテル・カリフォルニア症候群
「被害者」は群れの中に身を投じることによって、居心地のよさを体験します。
ここでいう「被害者」とは、何か具体的な被害にあった人という意味ではなく、「被害者意識の強い人」という意味で使っています。具体的には、自分に起こるすべての事象を他人や環境のせいにする人のことです。
「私がこういう性格になったのは親のせいだ」から始まり、「私が出世できないのは上司の見る目がないからだ」「私の営業成績が上がらないのは担当するエリアが悪いからだ」などなど、挙げたらキリがありません。
彼らの根底には、「決して自分は悪くない」という考えが横たわっています。
特に若い「被害者」たちは、先輩や上司と飲みに行くことを拒む一方で、事あるごとに過剰なまでに同期会を開催します。ここは、先輩社員、上司、会社の悪口大会と化し、自分たちを正当化する絶好の場となります。
「うちの課長は、部長の言いなりで困るよ」
「えーっ、そうなの、偶然だね。うちの課長も上しか見てないぜ」
「こんな課長ばっかだから、うちの会社は顧客満足度が低いんだよなー」
このように、被害者にとって自分の発言が賛同を得ることほど自分の気持ちが満たされることはありません。
「被害者」が集まる同期会は、以下のような人たちが多く集う場所になります。
(1)客観的に見て、明らかに本人に問題があるのに、自分のことは棚に上げて、上司や会社に対する不満を延々と話し続ける人。
(2)自分が今後どんなキャリアを積んでいきたいかなど、本人のビジョンが明確になっていない人。
(3)自分を客観視できず、自己認識が乏しい。なのに、自分以外は事細かに観察し、経営者気取りで悟りきったような理屈や批判を並べ立てる評論家タイプ。
自分たちを正当化する以外にも、ここでは参加者同士が下には下がいることを確認して安心します。だから、できが悪い人ほど、同期会には声がかかります。自分はまだ大丈夫だと確認するためには、自分よりできの悪い人が必要になるわけです。
ところが、できの悪い人は、なぜ自分に声がかかるのかという真の理由はわかりませんから、自分が人気者だと錯覚します。自分の存在が認められた気になって意気揚々としてこの同期会に参加するわけです。そして、自分のバカさ加減を自慢げに披露して、参加者から絶大の人気を得ることになります。こうして、参加者全員が自分の存在意義を確認でき、正当化できる場から抜け出せなくなるのです。
私は、ますます群れていくこの現象を「ホテル・カリフォルニア症候群」と呼んでいます。