1.社長と社員では、持っている「ものさし」が違うから
一般社員は1000円単位で物事を考えます。しかし社長は、100万円単位で考える。
人間はケタが3つ違う世界のことは、想像ができません。
2.社長と社員では、見ているものが違うから
社長は「先」を見据えて、長期的にどのように会社を経営していくかを考えていますし、社会情勢の変化にも目を向けています。
一方、一般社員は今日の仕事で手一杯で、「先」のことを見る余裕がない。見えないことは理解できません。社長が「回れ、右!」と号令をかけたとします。社員は、そもそも「回れ、右!」の意味がわからない。わからないから動けません。
しかし、優秀すぎる社長は、「どうして『回れ、右!』ができないのか」がわかりません。「どうしてわからないのか」がわからないのです。
3.社長が社員に対して「自分と同じように動いてほしい」と思っているから
優秀すぎる社長は、社員に「何で、こんなことができないか?」と思ってしまいます。
でも、社員はできなくて当たり前、やらなくて当たり前です。
だから、できない人でも、やらない人でも「できるようになるしくみ」をつくらなければダメです。
社員は、社長の言うことを理解できないのが当たり前です。
優秀すぎる社長は、ときに「うちの社員はバカだ」と言いますが、バカな社員をつくったのは、社長自身です。
では、どうすれば社長と社員の溝を埋めることができるのでしょうか。
それは、「社長と社員(幹部)が一緒に勉強すること」です。
社長ひとりが勉強しても、会社をよくすることはできません。社長がもっと優秀になって溝が深まるだけです。会社の成長に必要なのは、勉強している社員の「数」です。社員も一緒に勉強し、スキルや知見が増えれば増えるほど、会社はよくなります。
もちろん、わが社には、自分から進んで勉強する殊勝な社員はいません。
そこで私は、強制的に勉強会に参加させています(勉強会の参加回数を人事評価と連動させる)。
「社員に強制するなんて、小山昇は非人道的だ」と批判されたこともあります。でも、社員は、悪いことは教えなくてもやりますから、よいことの強制は、社長の仕事です。
和幸工業株式会社(自動車整備・販売/千葉県)の五十嵐正社長も、「かばん持ち」をする前は、「うちの社員はバカだ」と思っている社長でした。
自動車業界は、少子化や買い換えサイクルの長期化などの影響で、新車販売台数が伸び悩んでいます。総販売台数が減ると、当然、総整備売上高も減少に転じる。自動車整備事業は、典型的な不況業界と言えるでしょう。
そんな中、和幸工業は、売上も利益も10年で2倍に伸びています。
和幸工業が堅調なのは、社長と社員が一緒になって勉強をしたからです。
その結果、社員が「回れ、右!」の意味を理解するようになり、社員が同じ方向を向くようになったからです。
社長と社員が学びを共有するからこそ、同じ方向を向いて仕事ができます。