会社として大切なことを明言する

宮島宗太(仮名)
メディア系企業勤務。リクルートグループ、外資系ネット通販企業、大手コンサルティングファームなどを経て現職。主にリクルーティングを中心に、人事系のキャリアを歩む。

宮島 その観点で、私はいままで2タイプの会社にいて、対照的だなっていう部分と、共通している部分があったんです。

 2つの会社はリクルートグループと外資系ネット通販企業なんですけれど。リクルートグループの時は、基本的に「好きなようにしてください」に近いスタンスで、根本の意志ありきで仕事が進むカルチャーがありました。マネジメント側も、部下が何か相談しに来ると「で、おまえは、どうしたいの」と聞く。だから、部下は、相談というよりも、レビューしてくださいという感じでやってくることが多いんです。「僕はこういうふうに考えている、ちょっとそれに対して、○○さんなりの意見を言ってもらっていいですか」みたいなことが多かった。

 もう一つ、外資系ネット通販企業のほうは、「じゃあ本当にこれ、好きなようにやっていいんだっけ」と感じる部分があって。私の場合、半分ぐらいはフルフィルメントセンター(物流センター)にいたんですね。そこはいわゆるオペレーションの現場で、工場に近い。だから、個人が好き勝手、細かいところまでやると、まずは、オペレーション効率や品質が下がってしまう。加えて、事故が起こる確率が高まるんです。

 リクルートグループはどんなことをやっても、製造業ほど事故リスクはないと思うんです。けれど、外資系ネット通販企業のフルフィルメントセンターでは、服装一つ一つに至るまで、安全を意識したルールがあるんですよ。ネックストラップも、機械類に巻き込まれないように、ポーンと抜けるようになっている。

 その中で、じゃあ、好きなようにどれだけやらせるかっていうのが、なかなか難しいというのもありました。

 ただ、共通してる部分として、リクルートグループは「どんどん意見を言え」という文化なんですよ。外資系ネット通販企業も、とはいえ「好きなようにしてください」というよりは、「僕らは安全・品質・生産性というのを、すごく大切にしている。そしてこれを向上させるために、みんなのアイデアをどんどんください」というスタンスなんです。どんどん改善提案を、有期雇用の方々からも吸い上げます。多い人だと、年間で数十本、本当に細かい作業改善を挙げてくれるんです。外資系ネット通販企業の提供サービスはどんどん変わっているし、取り扱い品目もどんどん増えているので、現場の作業変更などは、しょっちゅうなんですよ。

 やっぱり、現場を一番知っているのは現場の人なので。その中で、テーマに沿って、好きなことというよりは、自分が正しい、自分がアイデアとしていいなと思った部分を挙げてくださいと会社は伝えていました。

 両社に共通して言えるのは、会社として、僕らはこういうことを大切にしているんだよと明言をしている。だからこそ、好きなことを、ちゃんと出してくれるのかなと感じています。

大森 それはおっしゃるとおりですね。

宮島 もちろん、リクルートグループも何でもOKではない。「それ、リクルートグループでやることじゃないだろう」というのは、さすがにあったりします。

 外資系ネット通販企業の場合も、好き勝手やれというわけではなく、もちろん安全・品質・生産性っていう大前提っていうのを打ち出してあるからこそ、いろいろ考えていいんだっていう安心感っていうのがあるんです。その2パターンが対照的でおもしろかったなと思います。