人工知能(AI)への関心が急速に高まっている。それだけ、世間を驚かせるようなAI関連のニュースが続いているということだ。とくに2016年に入ってからは、ビッグニュースが続出だ。

 ご存じのように、今年3月、Google DeepMind社(Googleが買収したイギリスのベンチャー企業)が開発したコンピューター囲碁プログラムの「AlphaGo」が、世界最強の囲碁棋士のひとりと称されるイ・セドルとの五番勝負に4勝1敗と圧勝。「コンピュータが囲碁で人間に勝つには、あと10年はかかる」と言われていただけに世界を震撼させた。しかし、AIショックはそれだけにとどまらず、同じく今年の3月には、ショートショート(掌編小説)の新人賞である「星新一賞」の一次審査をAIが書いた小説が通過。

 さらに4月には、マイクロソフト、オランダの金融機関 ING グループ、レンブラント博物館、デルフト工科大学による共同プロジェクト「The Next Rembrandt」が開発したAIが、まさにレンブラント自身が描いたとしか思えないレンブラント風「作品」を発表。男性をモデルとした人物画だが、これも実在の人物でもなく、レンブラントの過去作品に描かれた人物でもなく、「たぶん、レンブラントならこんな感じの男性をモデルにするだろう」とAIが判断して作り出した「モデル」である。また、ニュースなどの映像では分からないが、3Dプリンタで描かれたこの作品は、レンブラントのタッチ、それこそ油絵の具の盛り上がり方なども正確に再現しているという。 

 だがこれまで、小説を書いたり絵を描いたりといういわゆる「クリエイティブ」な作業は、AIにとっては最も苦手な分野だと言われてきた。一般向け雑誌としては世界で最もテクノロジーの最前線に強いと思われる『WIRED』の日本版2015年12月号では、「保存版」と銘打つくらいの量的にも質的にもかなり濃いAI特集を組み、AI開発の最前線を伝えているが、そこでも「AIがクリエイティブ能力を有するのはまだ先の話」という主旨のことを述べている。

 しかし、それから半年と経たないうちに世界的な画家の「完全コピー」画家を生み出し、一次審査とはいえ、並の人間以上の文章力を持つAIも出現した。歴史に名を残すほどではないにしても、並の人間以上のクリエイティビティをAIは実装したと言えるだろう。

世界に衝撃を与えた「オズボーン論文」

 また2015年10月には、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が同大学のカール・ベネディクト・フライ研究員とともに著した『雇用の未来―コンピューター化によって仕事は失われるのか』(PDF)という論文が世界的に話題になった。日本でも大きな話題になったのでご存じの方も多いだろうが、今後10年から20年で米国の総雇用者総数のうち47%の人の仕事がコンピューターに取って変わられてなくなると予想されている。また、野村総研でも「日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能等で代替可能に」と、2015年12月にレポートしている。