アイデアは「批判」によって鍛えられる
もちろん、ナマズでいれば批判は避けられません。
チーム内の予定調和から外れようとするのだから、それは当然のことです。しかも僕はゼロイチのアイデアにこだわっていたから、なおさらです。ゼロイチは、上司や同僚の常識、業界の常識から外れているケースも多いですから、批判にさらされない程度ならゼロイチではないとさえ言えます。
もちろん、批判を受けるのは苦痛です。しかし、ゼロイチにとっては、この批判を受けるプロセスが不可欠。なぜなら、すべてのゼロイチの種となるアイデアは「仮説」にすぎないからです。批判にさらされ、率直な議論をかわすことによって、「仮説」を検証して精度をあげるプロセスが絶対に必要なのです。
そのためには、まず第一に、周囲の思惑を度外視して、自分が正しいと思うアイデアを堂々と主張してみることが大切。批判を恐れて、”尖ったアイデア”を丸めてしまっては、正しい検証プロセスを経ることができないからです。
第二に、どんなに厳しい批判を受けたとしても、「人格攻撃」をされているわけではないとクールに受け止めることです。慣れていないと、ここで感情的に反発したくなる衝動がこみ上げますが、それでは「傷つけあう」だけで終わってしまいます。
それよりも、批判や意見は一度すべて受け止めることです。感情的になっている相手や、凹んでいる自分を客観的に受け止め、冷静に状況を認識する。「メタ認知」と呼ばれる手法で、自分を客観視するのです。
そのうえで、「プロジェクトの目的を達成するために、批判を受け入れるべきかどうか」をひとつずつ検証していきます。必ずしも批判そのものが正しいとは限りませんが、そこにヒントが隠されていることは少なくありません。自分が見過ごしていた観点を与えられることがあるのです。その場合には、相手に感謝したうえで、批判によって得た気づきを受け入れ、初期のアイデアに修正を加えればいい。その結果、アイデアはさらに磨き上げられるでしょう。
一方、じっくり考えた結果、やはり「その批判はあたらない」と思えるのであれば、批判者が上司であろうが多数派であろうが、その批判に負けず、しなやかに自らの主張を貫く努力をすべきです。一度、客観的な検証を経たアイデアは、必ず、その強度を高めています。きっと、より説得力をもって、批判に抗することができるはずなのです。
だから、ゼロイチを志すならば、自ら率先してナマズになる覚悟が必要だと思います。それによってコンフリクトも生じますが、同時にアイデアを磨くチャンスも得られます。さらに、組織が”ヴェルサイユの池”に堕すことも防ぐことができるのです。