英国よりEUへの好感度が低い国民は?

 英国の国民が6月23日に国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選んだ。欧州債務危機や難民・移民問題に有効に対処できないEUへの信認が低下しているヨーロッパでは英国以外のスペインやフランスなどへEU離脱の気運が連鎖反応のように広まり、英国のEU離脱は「終わりのはじまり」となるだろうという見方が生まれているようだ。

 この「離脱連鎖」という見解は果たして可能性が高いのか、データから確かめてみよう。

 まず、英国民以上にEUを好意的に思っていない国民がEU諸国の中にいるのかどうかを国際意識調査で探ってみよう。

 米国のピュー・リサーチセンターは、時宜に応じた設問で、定期的、不定期的に多くの国際比較調査を行っており、日本を含め各国の報道機関は、この研究機関の調査結果を引用することが多い。ちょうど6月7日には、下旬に予想される英国の国民投票をめぐる関心に応えて、EU主要国のEUへの考え方を特集した調査結果が公表され、英国のEU離脱が決まったのち、このうち英国についての結果がわが国の新聞報道でも引用された。ただし、英国ではEUへの不信が強まっていたということを裏づける意味合いで引用されただけで、各国比較を含めた詳しい内容は報道されていないようだ。そこで、まず、この調査結果について見てみよう。

 EUに対して「好ましい」(favorable)と考えている者の割合は、今年春の調査結果では、「非常に」(Very)と「やや」(Somewhat)を合わせて、英国の場合44%であり。「好ましくない」(unfavorable)の計48%を下回っていた。調査対象10ヵ国のうち7ヵ国では、「好ましい」が「好ましくない」を上回っており、英国のEU評価は低いことが分かる。ただし、英国よりEU評価が低い国が2ヵ国ある。すなわちフランスとギリシャでは英国よりEU好感度が低くなっている。

図1 ヨーロッパ各国におけるEU評価