法律を上から縛るはずの憲法が
公職選挙法に大きく左右されている

 本来なら憲法は、法律を上から縛るはずのものだ。そのなかでも憲法第96条は、他の憲法の改正条件を定めるのだから、特別に高い地位を持つものだろう。だがその実質は、公職選挙法により、大きく変わってしまう

 憲法改正をめぐっては、衆議院の「3分の2」はもはやなきに等しく、国民投票の「過半数」とは物事を投票で決めるときの最低ラインだ。今回クリアされた参議院の「3分の2」のみが特別なハードルであったと言えよう。ただし参院選は、1人区は小選挙区、2人以上の区は中選挙区、比例代表制は大選挙区ということで、全体としては訳のわからぬ混合キメラになっている。

 選挙制度にその実質が大きく左右されることを、第96条は想定していなかったのではないか。だが1994年にすでに第96条は「改憲」されていたのだ。そのときは政権交代が可能な政治体制を作ることばかり考えられ、このことは論じられていなかったように思う。

 公職選挙法は選挙における議員の「決め方」を定めるが、それは上位にある憲法第96条という「決め方」の実質に大きく影響する。そして公職選挙法を改正できるのは、憲法第41条により唯一の立法府として定められる、国会だけである

 いったい統治機構全体として、この権力バランスは適切なのだろうか。今後、改憲の論議が本格化するのならば、せっかくの機会として、選挙制度を絡めた権力バランスのあり方に議論が尽くされることを望みたい。