「週末起業」も5つのステップから生まれた

 ひとつのアイデアが浮かんでくるプロセスを紐解いてみましょう。私の場合、頭のなかでどのような作業をしているのかを整理してみました。

 たとえば、私が「週末起業」という起業スタイルを思いついた経緯を紹介します。「週末起業」というのは「会社を辞めずに起業する」という起業コンセプトで、私が提唱しているものです。起業というと、以前は「会社を辞めてから始めるのが普通」でしたが、私は「会社にいるうちから始め、うまくいったら辞めればいい」と提唱しました。書籍などで世の中に発信したところ「目からウロコの起業スタイル」として大きな反響を呼びました。

 私がこのコンセプトに思い至ったのは、当時、私が経営コンサルタントとして、起業家のお手伝いをしていたからです。その活動のなかで、会社を辞めて起業したもののうまくいかず、路頭に迷ったり、再びサラリーマンに戻ったりするビジネスパーソンをたくさん見ていました。

 そんななか、「何とか起業する人のリスクを減らせないか」と、いつも問題意識を持っていました。当然、起業の分野に関する本をたくさん読み、いろいろな経営者やコンサルタントの話を聞いていました。これがヤングの言う「ステップ1/資料集め」の段階にあたります。テーマに関係した資料を集めている状態です。もちろん、テーマに関係のない資料も集めていました。私には、もともと本や雑誌をたくさん読む習慣があったからです。

 その後、本格的に起業のコンサルタントとして仕事をすることを決意し、自分を特徴づける斬新なアイデアはないかと考えるようになりました。そして、これまで集めてきた資料のなかの複数の要素を比べてみて、組み合わせを考えたりしました。これが「ステップ2/資料に手を加える」の作業にあたります。すると、部分的なアイデアが浮かんできたりします。たとえば、サラリーマンと起業家を比較して「サラリーマンは不満が多いが、起業家は不安が多い」などということに気がつきます。そういうことを、逐一メモしておきました。

 もちろん、いつもこのことばかり考えているわけにはいきません。他の仕事もありますし、プライベートもあります。それで、いったん考えていることを忘れてしまいます。これが「ステップ3/孵化段階」にあたります。

 そんなことをしているとき、「ユリーカ!」と叫びたくなるようなアイデアをひらめきました。私のケースでいうと「会社員でも仕事をしていない時間があるじゃないか!その時間に自分のビジネスを始めてしまえばいいじゃないか!」というアイデアが浮かんできました。これが「ステップ4/アイデアの実際上の誕生」にあたります。

 実際のアイデアは机の上で浮かんできません。ある日、突然やってきます。ヒゲを剃っているときとか、お風呂に入っているとき、あるいは朝の寝ぼけまなこなときに訪れるかもしれません。私の場合は、たしか子どもとプールで遊んでいるときでした。