日銀は10月5日に「包括緩和策」を決定した。ゼロ金利、インフレ目標的な時間軸政策、国債・ETF・J‐REITなどの買い入れ、というように、日銀が従来いやがっていた政策が、ずらりと並ぶ(ただし、ゼロ金利といっても、当面は0.07~0.09%のあいだで推移することが多いだろう)。

 閣僚から日銀法改正を望む見解が出ているなか、日銀は政治的プレッシャーをそうとう強く意識したものと思われる。外国為替市場介入を頻繁に行いにくい雰囲気も、日銀への圧力を高める要因になっているだろう。米ピーターソン国際研究所のバーグステンは、4日のフィナンシャル・タイムズ紙で、「火には火を。中国や日本がドル買い介入を行って自国通貨をアンダーバリューに維持するなら、米国は同額のドル売り介入を行うべきだ」と過激に主張している。

 とはいえ、日銀の金融政策で対処できることはしょせんは限られている。6日のウォールストリート・ジャーナル紙の社説は指摘していた。「ゼロ金利への復帰は、貸し手と借り手に実際上はほとんど変化を起こさないだろう。この国ではどんな金利でも資金に対する借り入れ需要が出てこない。企業のネットの貯蓄はGDP比7%超もあり、半分の企業が負債を持っていない」「政策決定者は、マネーの量は、インフレやデフレを決める方程式の半分であることを思い出す必要がある。残りの半分は信用乗数である。別の表現でいうなら、それはアニマルスピリッツだ。それは政治の領域である」。