尖閣諸島問題を契機に、日中の溝が深まると同時に始まった中国の事実上のレアアース禁輸は、いまだ解除されていない。
レアアース(希土類)は、ウランなどの鉱石を採掘する際の“副産物”で、様々なハイテク機器に搭載、もしくは製造工程で利用される。今のところ代替品はなく、その供給の9割を中国に依存している。つまり、中国に生命線を握られている。
報復か、それともしたたかな計算か――。
週刊ダイヤモンド10月30日号の『まだ誰も知らない 中国リスク』特集では、まずレアアース“禁輸”が自動車、エレクトロニクスなど日本の製造業に与える深刻な影響ついて明らかにする。
たとえば、液晶テレビ。パネルに使用する大型ガラスを磨く研磨剤に、レアアースの1つ、酸化セリウムを利用する。
たとえば、自動車の排ガス浄化触媒。ここには炭酸セリウムが使われている。関係者の話を総合すると、いずれも在庫は逼迫している。また、次世代自動車として期待がかかるハイブリッド車、電気自動車の基幹部品には、ネオジム、ジスプロシウムが重要な役割を果たす。
こうした危機に対し、トヨタ自動車、シャープ、昭和電工、TDK、日立金属、信越化学工業、旭硝子などの主要メーカーは、どう対峙するのか。“脱中国”“代替技術”に可能性はあるのか。
レアアースに限らない。
日本企業の中国“依存”は年々高まっている。日本に本社を置く企業の売上高の16%、純利益の21%は中国で稼ぎ出している。ユニクロに至っては、生産の85%を中国で行なっている。
食生活も中国頼みだ。ハチミツ、まつたけ、たけのこ、落花生の7割は中国産。コンビニエンスストアの弁当にも、たくさんの中国産食品が使われている。
では、“共産主義+資本主義”の体制をとる膨張する大国と、われわれはどのように向き合えばいいのか。
折しも、中国共産党中央委員会(五中全会)において、習近平国家副主席が当中央軍事委員会副主席に就任する人事が発表され、次期国家主席に内定した。習近平副主席は、山積し深刻化する国内問題を解決することができるだろうか。
世界経済における最大の中国リスクは、人民元安である。外需に依存する中国においては、それは内政リスクだが、欧米諸国は強硬姿勢を崩しはしない。
歴史的な緊張のなかで、日本の危機感は欠如してはいないか。今一度、再考する時がきている。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)