シンプルな“だし”は商品になるか?
社内で議論をした結果は…

「鰹節は、鰹を捌いて、煮て、燻してつくります。これが『荒節』。その後、カビを付け熟成したものが『枯れ節』。更に天日で干し、カビ付けを4回以上繰り返したものを『本枯れ節』と呼びます。本枯れ節は、いわば発酵食品で、製造までに約半年かかるんです。もちろん、こうしてできた本物の風味は、化学調味料とはまったく異なります」

 そこで高津社長は、単なる飲食店にせず、お客さんに“むちゃぶり”をした。具も味付けもない「だし」を出そうと考えたのだ。本物のだしの味は、だしをとったことがないユーザーにとって新鮮な体験のはずだった。

「鰹節は、削ると酸化し、味が落ちます。和食屋さんでは、だしの旨みだけを抽出するため湯の温度にもこだわります。その味を“体験”してほしかったのです。しかし、社内では議論の対象になりました。だしは“商品”になるのか?これは“料理”とも呼べないのではないか――?」

 高津社長は「本店の移転中、期間限定で仮店舗だから実験と思って…」と、思い切ってこのアイデアを実行に移した。ところが、「むちゃぶり」が功を奏した。お客さんが、だしを100円で売る“だしの立ち飲みバー”の物珍しさに惹かれて押し寄せてきたのだ。ぬれおかきや汁物など、ほかの飲食メニューも、鰹節も、飛ぶように売れた。

「物珍しかったから、観光名所化したのです。オープン後、行列が他店舗の前に達して慌てるほどでした(苦笑)。年間の売り上げは、当社のつゆの素や鰹節のフレッシュパックを含め、約3億6000万円。期間限定のつもりが常設店となり、今は羽田空港、EXPASA海老名、丸ビルなどにも出店しています。また、料理を一汁三菜のスタイルで提供する店『日本橋だし場 はなれ』も営業しています。やっぱり“百聞は一見にしかず”ですよ」

 次に取材に行った『カルビープラス』も、開設4年で黒字化するなど、人気が高い施設だ。事業開発本部の柳田晶代氏が話す。

「カルビープラスでは、揚げたてのポテトチップスや、フライドポテトを提供し、製造工程をすべてご覧に入れています。泥付きのじゃがいもを洗浄、皮むきし、スライスした後、油で揚げ、味付けして提供する――それはカルビープラスでも、袋入りのポテトチップスも同じです。ところがお客様は製造工程をご覧になると『こうやってつくってるんだ』と驚かれるんです。私たち社員の立場だと当たり前のことが、まだまだ伝わってなかったんだな、と痛感する瞬間でもありました」