抗がん剤のリーディングカンパニーのひとつであり、また「チオビタ・ドリンク」などの一般向けヘルスケア製品でも知られる大鵬薬品では、人事部主導の全新入社員の研修が終わった後、医薬営業部門配属の新入社員を対象に医薬教育部での研修が行われる。医薬教育部とは、医師や薬剤師と接する医薬情報担当者(以下、MR)などの職種に必要な知識とスキルを育てる部門で、発足して今年で4年目を迎える。この3年ほどで新入社員の研修と各教育を見直したという。同社の医薬教育部の原田直尚部長にその狙いを聞いた。(講師ビジョン株式会社 代表取締役 島村公俊、構成/片瀬京子)
映像学習を通じて、
企業理念と現場の繋がりを関係づける
島村 医薬教育部というのはどのような役割を担った部署なのでしょうか。
原田 医薬教育部は、営業活動の最前線に立つMRとその上司、そしてMRを高度な知識と企画力でサポートする学術課員を教育面で支援する部門です。私たちが行っている人財育成は、人事部による会社の風土改革や、階層別教育とは異なり、営業部門に特化したものです。また、ある程度即効性が期待されているところが人事部教育とは違うところです。従って、どんな研修を通じて現在の本社営業本部の課題を解決するか、どんな研修を用意するかを戦略的に考えています。
島村 医薬教育部による新人教育にはどのようなものがあるのでしょうか。
原田 私は30年ほど前にこの会社に入社しましたが、今振り返ると、新人時代に患者さんのことを親身になって考えることが出来ていたかと言われると自信がありません。もちろん仕事は一生懸命していたのですが、気持ちが追いつくには時間がかかりました。この仕事のやりがい、社会への貢献度を、もっとはやく実感できていればよかったとも思っています。
そういった思いから、人事部からバトンを受けた新入社員研修の初日には、彼らに末期の胃がんにかかり、余命が限られた女性のドキュメンタリービデオを観てもらうことにしています。このビデオを選んだ理由は、私自身がとても心動かされたこともありますが、当社の新入社員の多くは経口の抗がん剤のパイオニアである大鵬薬品で、がん患者さんに貢献できる仕事がしたいという志をもって入社してくるからです。