レコード針の需要復活で2200種を世界中に届ける兵庫の地場企業日本精機宝石工業が一手に手がける、種類豊富なレコード針。需要がないと思い込んでいるのは日本人だけで、海外ではレコード人気が高く、針の需要が復活しているのだ

売り上げの9割は海外
レコード針の意外な需要

 レコードという豊かな音源が再評価されるようになり、レコード針の需要が高まっている。その貴重なレコード針を50年以上生産し続けている企業が兵庫県の奥地にある。

 大阪や神戸といった都市部から約200キロ離れた日本海が見渡せる地、新温泉町に本社を置く日本精機宝石工業(JICO、ジコー)である。

 同社は1966年にレコード針の生産を始めて以来、2200種類、年間20万本もつくり続けている。その91%は実に海外に輸出されている。交通が不便な地にありながら、JICOは小さな国際企業である。

 国内では骨董品のように思われるレコードだが、海外、特にヨーロッパでは今でも多くの家庭でレコードが大切にされ、高価なレコードプレーヤーが販売されている。そうしたユーザにとってJICOはなくてはならない企業である。

 社長の仲川和志(54歳)は、こう語る。

「ヨーロッパのお客様で、『亡くなった父親が大切にしていたプレーヤーの針が壊れていたが、JICOのおかげでそのプレーヤーが生き返り、レコードを聴くことができた。まるで父が生き返ったような気がした』というサンキューレターをもらったことがあります。探していた針を見つけることができたというメールもよくいただきます。つくり続けていてよかったなと思いますね」