大学#15Photo:123RF

コロナ禍で思わぬ特需が起きているのが、MBAを志望する社会人が急増している国内ビジネススクールだ。入試倍率が過去最高となったビジネススクールも続出している。だが、一口にビジネススクールと言っても、その性格は千差万別。特集『入試・就職・序列 大学』(全23回)の#15では、自分の目的にかなった、ビジネススクールの選び方を伝授する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

出身大学より“格上”の
ビジネススクール受験が大半

「MBAコースの受講生が一昨年と比べて、およそ2倍に増えており、今まで経験したことがない活況を迎えている。その理由は、外部環境が一変したことが大きい」

 そう話すのは、大学院受験や医学部編入のための予備校、河合塾KALSの鄭龍権講師だ。鄭氏の言う「外部環境」の変化とは、やはり新型コロナウィルスの感染拡大である。

 実際、にわかに起きているMBA人気は、主要ビジネススクールの入試倍率にも表れている。

 2020年度入試(21年4月入学者が受験)では、主に学部生が受験する全日制で、京都大学大学院経営管理教育部と早稲田大学大学院経営管理研究科(全日制グローバル)の入試倍率が急伸。また、慶應義塾大学大学院経営管理研究科もまだ公表されていないが、過去最高の倍率になったものとみられる。

 一方、社会人が多い夜間制では、18年4月に誕生した一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻と早稲田の同研究科(夜間主総合)がいずれも倍率4倍を超え、一橋の併願校にもなっている東京都立大学大学院経営学研究科経営学プログラムの倍率も上昇に転じた。

 全日制の倍率上昇の要因は、中国などの海外受験生の増加に加え、「コロナ不況による就職難で、日本人学部生の進学も増えた」(鄭氏)ことにある。夜間制も“コロナ特需”だが、その受験者を年代別に見ると動機が異なるようだ。

 20代後半~30代前半の若手社会人は、リモートワークによって生じた時間的余裕をスキルアップに充てるため。そして、特に受験者増をけん引する30代後半~40代の中堅社会人は、「コロナ禍による経営環境の悪化と雇用不安に背中を押されたケースが目立つ」(同)という。

 また、受験者の学部時代の出身大学のボリュームゾーンは全日制、夜間制を問わず、GMARCHだ。そこに東京理科大学や芝浦工業大学、東京都市大学、薬学系大学といった理系大出身者が続くという。

 こうした受験生は、一体何を基準に受験校を選んでいるのか。鄭氏いわく、「総じて大学受験時の偏差値ランキングの延長線で選びがち。特に現役生は学歴ロンダリングの意味合いが強く、総じて出身大学よりも格上の大学院を狙う」。

 ちなみに、全く異なる動機による選び方もある。慶應や早稲田などには「エグゼクティブMBA(EMBA)」という、長期間の就業年数や勤務先の規模などで入学者をふるいにかける、まさにエグゼクティブのためのコースが存在する。名だたる大企業が自社の幹部候補を送り込むため、一種のサロンになっているという。入学者の大半は企業からの派遣だが一般枠もあり、人脈づくりを目的とする人が受験することもある。

 指摘しておきたいのは、このEMBAはともかく、大学の知名度や学部受験時の偏差値ヒエラルキーだけで受験校を選ぶと後悔しかねないことだ。一口に国内ビジネススクールと言っても、大学ごとに求められる学力も学ぶことも大きく異なるからだ。

 そこで、次ページから、主要ビジネススクールの知られざるヒエラルキーと共に、その学校が「実務肌」なのか「理論肌」なのか、という受験校選びにおいて重要な判断材料となるタイプ分けを行った。MBA取得後のキャリア形成にも影響してくるはずだ。ぜひ参考にしてほしい。