12月の税制改正によって、法人税制が大きく変化した。法人実効税率を引き下げる一方、赤字企業にとって頭の痛い外形標準課税は強化されたのだ。しかも、この流れは今後も拡大していく可能性がある。

日本企業の7割を占める
赤字企業に打撃

 毎年12月にまとめられる、次年度の税制改正大綱。2016年度の目玉の1つが、法人実効税率(国税と地方税を合わせた税負担割合)の引き下げだった。現在の32.11%から段階的に下げ、18年度には29.74%とすることが決まったのだ。

今後も拡大路線!?<br />赤字企業を悩ます外形標準課税の憂鬱儲かっていない企業に厳しい税制になっていき、市場の新陳代謝が促される

「日本の法人実効税率は高い」とは、よく議論される話だ。実際、ドイツは29.66%、中国は25%。さらに英国は20%、シンガポールはなんと17%だ。今回の引き下げで日本は30%を切り、ドイツとほぼ同水準となる。まだまだ下には下がいるが、今回の引き下げが「日本企業の国際競争力に寄与するのでは」との期待がある。

 企業にとって喜ばしいことなのだが、一方では外形標準課税の強化も決定された。外形標準課税とは、利益にかかわらず、給与総額や支払い利子など事業規模に応じて課税するものだ。

 つまり、赤字であっても税金を払わなければならない。04年、資本金1億円以上の企業を対象に、「法人事業税の8分の3」に相当する割合で導入されたのだが、16年度には「8分の5」に増やすことが決まった。

 日本企業の実に7割近くが赤字だ。外形標準課税の強化によって、こうした赤字企業の税負担は重くなる。また、赤字企業が将来の税負担を減らせる繰越欠損金控除も縮小されるから、赤字企業には二重の痛手。一方、きっちり稼いでいる企業にとっては、今回の税制改正は朗報だった。

「法人実効税率引き下げの財源確保のために、赤字企業への課税を強化した」。そう解釈する向きも多い今回の税制改正だが、「本来、法人実効税率の引き下げと外形標準課税強化は別の話です」と解説するのは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)ジャパン代表の鈴木洋之氏。法人実効税率引き下げは、あくまでも日本企業の国際競争力強化が一番の目的である一方、外形標準課税は「赤字であっても公共財(編集部注:政府による国防や司法、警察サービスに代表されるもの)を受けているのだから、一定の税負担はすべきという考え方に基づいています」(同)。