欧州では、財政再建に対する国民の反応が各国で異なっている。

 英政府は10月20日に、財政支出削減策を発表した。2014~15年度予算までに、890億ポンドの支出をカットする。公務員は49万人が失業し、地方政府向け支出は51%削減される。年金支給開始年齢は66歳に上がる。

「オズボーン財務大臣のギャンブル」といわれているように、経済への打撃を補うには、経済成長の実現が不可欠だ。キャメロン首相は英大手銀行に対して、中小企業への貸し出しを増加するように尻を強くたたくと同時に、経済外交を進めようとしている。

 一方、フランスでは、サルコジ大統領が年金支給開始年齢の引き上げ(60歳から62歳へ)を伝えたところ、激しいストライキ、デモが勃発。1968年の5月革命のスピリッツが戻ってきたという声もある。市民の怒りは鎮まらず、今後もストが予定されている。

 対照的に、英国ではフランスのような数十万人規模の激しい抗議行動は起きていない。削減策発表当日は、首相官邸や政府庁舎の前でデモがあったが、2日後に行ってみたら、静かになっており、通常の警備体制に戻っていた。新聞には「財政支出カットに抗議するため、モヒカンカットにしてみました」とにこやかに笑う革ジャン姿の人の写真が載っていた。