中国上海でのヘンリー8世校のプロモーション風景(2019年) 写真提供:スティーブン・バード氏

パブリックスクールでの体験

――どういうきっかけで、パブリックスクールの現地校設立に関与されたのですか。

バード 英国ウェールズに、ヘンリー8世の勅令で設立された500年の歴史を持つクライストカレッジ・ブレコン校というパブリックスクールがあります。茗渓学園でも交換留学を行うなど交流がありました。その交流の中でクライストカレッジの教頭と知己を得て、私のそれまでの経験が貴重だということで、姉妹校をマレーシアに開校するための創立メンバーとして加わることになりました。

 このヘンリー8世校(KH8)では、国際関係部の責任者を務めながら、英語能力が足りない生徒をサポートするEAL(English as an Additional Language)も担当しました。開校は2018年のことです。学校のある首都クアラルンプール近郊のサイバージャヤは、政府の推進するマルチメディア・スーパーコリドーというIT特区の新興都市です。

――どのような特徴のある学校でしたか。

バード 教育はもちろん、学校生活においても、英国のパブリックスクールに在学しているのと同じ環境の学校でした。もちろん、授業は英語で行われます。この学校のオーナーは中国系マレーシア人でした。マレーシア自体、ブミプテラ系に加えて、中国系やインド系も多いミックスカルチャーの国です。生徒は、教員の子どもや現地の生徒に加え、中国、台湾、韓国や日本から来ていました。自然と、生徒も異なる文化に触れる機会が多くなり、相互理解が進みます。

――校内の雰囲気も日本の中高とはだいぶ異なりそうですね。

バード 在校生は入学後に四つのハウスのいずれかに所属します。上級生がメンターとして下級生の面倒を見ます。学校の行事はこのハウス間で競い合います。年度終わりの7月には学業も含め高ポイントのハウスが表彰されます。日本の学校でこのハウスの役割を担うのは、部活動ということになるかもしれません。

 上級生の特権、という点も日本の私立校とパブリックスクールでは異なりますね。教員から委嘱されてお昼時など校内を巡回したりします。Aレベルを学ぶ生徒になると、教員の監視抜きで情報機器などを扱え、制服を着なくてもよいなど自由度が高くなります。また、個々の生徒をとても丁寧に見ていますね。

――どのくらいかかるものでしょう。

バード 日本の私立校の学費は年間100万から200万円で、寮に入ったとしても300万円以下でしょう。パブリックスクールでは、寮に入らなくても最低300万円で、学年が上がると寮費も含めて500万から800万、900万円となる場合もあります。

――寮生活はどうしてもおカネがかかりますね。

バード 日本の私立校では、寮制はあまり一般的ではありませんし、その設備も生徒の生活スペースもどうしても見劣りするでしょう。パブリックスクールでは、寮は選択制で、一つの部屋を3~4人でシェアします。上級生になると2人部屋となり、Aレベルを学ぶ生徒になると、多くの場合個室です。通常、共用の小さな台所が付いています。

姉妹校となったKH8に古巣の茗渓学園から短期留学プログラムで訪れた生徒と一緒に 写真提供:スティーブン・バード氏
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