バブルはなぜ発生するのか――。金融バブルの崩壊による世界的な経済不安が和らぎつつある今、その再検証が盛り上がっている。投資家のマインドが複雑に影響し合い、加熱状態をコントロールできなくなる「得体の知れない経済状態」がバブルだとすれば、それはいったいどのようなメカニズムで生まれ、そして消えて行くのか?

 5月下旬に行動経済学会が開催した「行動経済学フォーラム」には、日本を代表する経済の専門家が集まり、熱い議論が交わされた。第1回目のレポートでは、ダイヤモンド・オンラインの人気連載「今週のキーワード」筆者でもある真壁昭夫氏(信州大学経済学部教授)を司会進行役に、柴崎健氏(みずほ証券金融市場調査部チーフファイナンシャルアナリスト)、小幡績氏(慶應義塾大学経営管理研究科准教授)、俊野雅司氏(大和ファンド・コンサルティング上席研究員)、勝間和代氏(経済評論家)が、独自のバブル観をレクチャーする。果たして「バブルの正体」とは?(取材・文/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

行動経済学フォーラムでは、専門家5人による様々な議論が交わされた。各分野の第一人者による「金融バブルの再検証」に、聴衆は真剣に耳を傾けた。

真壁 現在、世界は「100年に一度の経済危機」に直面しています。サブプライムショックに端を発した今回の大不況は、「金融バブルの後遺症だ」と言われています。

 では、いったいバブルは何故できるのか、そして何故崩壊するのか、そのメカニズムとは何なのか――。それらを解明するためには、ある経済事象に対して、「人間がどのように考えて行動した結果、それが起きたか」を分析する“行動経済学”的なリサーチが必要です。

 そこで今回は、日本を代表する経済専門家の方々に、行動経済学的な観点から、バブルの正体について詳しくレクチャーしていただきましょう。まずは、みずほ証券アナリストの柴崎さんからお願いします。

柴崎 それでは、「金融バブルの歴史的考察」を通して、バブルは何故起きるのか、その過程はどうなっているかを、考えてみましょう。

 まず、現状を見てみると、世界の金融資産(エクイティ、民間デット、公的デット、預金の合計額)は、足許の2007年には200兆ドル近くまで拡大しています。