震災後、再稼働できなくなった原発が増えたため、火力シフトが進んでいる。
これによってLNG(液化天然ガス)などの発電用燃料の輸入が増えている。これは、発電コストを高め、いずれ経済活動に影響を与えるだろう。
それだけでなく、CO2の排出量も増えているはずである。
環境基準の達成は、現在のエネルギー基本計画が作られた2010年においては、重要な政策目標と考えられていた。しかし、震災後の電力不足の中で、この問題は忘れ去られてしまったようだ。脱原発を巡る議論においても、火力シフトによる環境問題は、重要な点としては論じられていない。
単純に考えれば、今後原子力発電への依存度を引き下げてゆけば、火力発電量が増えて、CO2排出量は増えるはずだ。再生エネルギーに期待するといっても、原発に代替するほどの発電量を実現できるとは到底思えない。仮に今後の発電量を飛躍的に増やすことが可能になっても、発電コストは著しく高まるはずである。脱原発を主張する人たちがこの問題をどう考えているのかは、あまり明らかでない。
震災後発生したさまざまの問題解決が優先するから、環境基準達成は忘れてもよいのだろうか? そうはいかない。これは、人類の未来に重要な影響を与える問題だからである。
日本の国際公約
それに日本は、国際公約をしている。この点からも、環境問題が忘れられてよいわけはない。
これまでの経緯がどうであったのかを、簡単におさらいしておこう。
1997年12月の京都議定書において、温室効果ガスについて、先進国における削減率を1990年を基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標値を達成することが定められた。
2008年の洞爺湖サミットで、世界全体の温室効果ガス排出量を2050年までに少なくとも50%削減するとの目標につき一致をみた。2009年7月のラクイラ・サミットでは、この目標を再確認し、先進国全体で2050年までに1990年比で80%以上を削減するとの目標が支持された。
さらに、2009年9月の国連気候変動首脳会合において、日本は、2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減することを表明した。