
真壁昭夫
第211回
民主主義政治の基本原理は多数決だが、そのシステムゆえに、ポピュリズムによって国が誤った方向へ進むことはままある。今のユーロ危機がまさによい例だ。それに警鐘を鳴らして軌道修正を促すのが、他ならぬ金融市場の役割とも言える。

第210回
米S&Pがユーロ圏9ヵ国の格付けを一斉に引き下げ、一時金融市場に激震が走った。しかし、足もとで見ればその影響は限定的だった。実際、格付け会社による“格下げ”の影響度はどの程度のものなのか。また、残された不安は大きいのか。

第209回
フランスの国債格下げにまでつながり、猛威をふるう欧州のソブリン危機。ここにきて、ドイツやフランスは、ユーロ諸国の財政規律を強化する「EU新条約」を打ち出した。だがこの構想には、ユーロ圏をさらなる混乱に導く不安要素も多い。

第208回
大震災や超円高により、2011年の日本経済は大打撃を被った。日本にとって、本当に厳しい1年だった。2012年は、縮み込んでしまった我々の心をもう一度奮い立たせるべきだ。かつて世界を席巻した日本の“現場力”は、まだ死んでいないのだから。

第207回
金正日総書記の死去は、アジアのパワーバランスを大きく変化させる可能性がある。北朝鮮は昔から、米国、中国、ロシアなど、大国のパワーバランスの上に成り立つ特殊な場所だった。北朝鮮問題を通じて、アジア全体を考える必要がありそうだ。

第206回
消費税増税議論などに絡み、野田政権の支持率が低下している。しかし、筆者は“どじょう宰相”に少なからぬ期待を抱いている。本来実直で国民の信頼を得やすい野田首相は、そろそろポピュリズムを捨て、改革を断行する決意をするべきだ。

第205回
「働いても働いても、生活が楽にならない」という声が増えている。残念ながら、この状況はもう元へ戻らないだろう。中産階級の没落に歯止めがかからなくなった今、ビジネスマンが持つべきは「フリーエージェント」的な思考と言える。

第204回
欧米のソブリンリスクが世界経済に与える影響が、いよいよ不安視されている。2012年の日本経済も、視界不良だと言われる。だが、それは本当だろうか。世界危機の今、日本人にはむしろ“縮み志向”から抜け出すチャンスが到来していると見る。

第203回
終わりの見えない欧州危機――。その責任は、ギリシャやイタリアなどの債務国のみならず、「政治は市場よりも強い」と誤解したドイツをはじめ、大国にもある。見渡せば、政治政治機能の低下が招く危機は、世界全体で顕著になっている。

第202回
野田首相がTPP交渉への参加を表明してもなお、賛成派と反対派が入り混じって議論が紛糾している。「TPPが日本を滅ぼす」という主張は本当だろうか。筆者はむしろ、TPPには日本の改革を促す「外圧効果」があると考えている。

第201回
前社長の解任劇から一変、深刻な損失隠しが発覚し、存亡の危機に立たされているオリンパス。いまだ「企業統治無法地帯」が巣食う日本企業の実態が白日の下に晒されたことは、むしろよかったかもしれない。日本企業は、今何を考えるべきか。

第200回
ようやく包括合意が成立したギリシャ救済案だが、ギリシャが国民投票の実施を表明したことで、再び不安が募った。結局、国民投票は回避したものの、ユーロ圏の足並みの乱れはもはや末期的だ。そもそもギリシャ危機の真因はどこにあったのか。

第199回
10月下旬のEU会議で、ようやくギリシャ救済の合意が成立した。とりあえず、金融市場の参加者はほっと一息ついたところだ。しかし、その背景を見るにつけ、ユーロ問題の“とばっちり”とも言うべき円高には、まだ歯止めがかかりそうにない。

第198回
2004年の法改正時に「100年安心」と言われた年金制度が揺らいでいる。足もとで持ち上がった支給開始年齢の引き上げ議論が、いよいよ国民の不安を増幅させているのだ。年金制度改革は、なぜここまで場当たり的に進められてきたのか。

第197回
アップルを世界最大のITメーカーに押し上げた、稀代の経営者であるスティーブ・ジョブズが逝った。称賛ばかりが先行するジョブズだが、「やり過ぎた経営者」と批評する向きもある。ジョブズがもたらした「IT革命」の功罪を考える。

第196回
欧州ソブリン危機が世界経済に波及することを恐れる投資家たちは、新興国から一斉にリスク資産を引き上げ始めた。とりわけ、世界経済の牽引車となる中国経済には、減速懸念が募っている。「中国ショック」は本当に起きるのだろうか。

第195回
最近、ロンドン在住の著名ファンドマネジャーが出した「欧州株式を買おう」という投資家向け書簡が注目されているという。ソブリン危機で割安感が募っている欧州株は、本当に“買いどき”なのか。その真贋を考えよう。

第194回
なぜこれほど金の価格が上昇し続けているのか――。ここにきて、さすがに多くの人々がこんな疑問を抱くようになってきた。その説明にはいくつかのパターンがあるが、本質を理解するためにも、「金と通貨の恐ろしい事情」を考える必要がある。

第193回
ギリシャ危機は、もはや爆発寸前の様相を呈している。その背景には、ギリシャの救済スキームを巡るEU諸国の足並みの悪さがある。EUよ、いい加減に目を覚ませ。こんな状況を続けている場合ではない。この際、抜本的な解決策を提示したい。

第192回
鉢呂経済産業相の辞任など、野田内閣は発足直後から多くの難題に直面している。「菅首相よりよほどマシ」と、意外な支持率の高さを見せるものの、果たして前内閣と比べて実力はいかほどだろうか。実像と期待の間に横たわる不安を探る。
