「世界大恐慌」の再来を防げ!
小手先の弥縫策で欧米リスクは解消しない

 足もとの欧米の金融市場は、まだ不安定な展開から脱し切れていない。基軸通貨であるドルの下落は続いており、世界的に株式市場は振れ幅の大きな相場動向になっている。

 この背景には、不動産バブルの後始末が続いている、欧米経済の先行きが不透明であることに加えて、本来解決策を見つけなければならない政治の機能が低下していることがある。

 8月上旬からEUは、スペインやイタリアなど国債を大規模に買い支えるオペレーションは開始した。しかし、それは単に当該国債の価格下落を止める手段であって、ソブリンリスク問題そのものを解決するものでではない。

 あるいは、米国の約2兆4000億ドルの歳出削減プランも、とりあえず与野党の合意を形成して、最悪の事態=デフォルトを回避するための方策だ。今後、超党派の会議で議論される1兆5000億ドルの歳入削減がまとまらなければ、いずれ米国の財政悪化の問題が蒸し返されることは避けられない。

 こうした小手先の弥縫策で、欧米諸国が抱えている問題を本格的に解きほぐすことはできない。

 もう1つ心配なことは、これから米国のティーパーティー(茶会派)が主張するような性急な歳出削減を実施すると、世界経済そのものの腰を折ってしまう可能性があることだ。

 1930年代の大恐慌当時を振り返ると、1932年に急落した株価は37年にかけて値を戻した。それを見て、財政支出の削減を急いだこともあり、38年にかけて再び株価は急落した。

 当時と今とでは、資本の蓄積や資本市場の規模・経済に対する影響はケタ違いだ。今回は、そうした事態の発生は何としてでも防がなければならない。弥縫策では問題の解決にはならない。