真壁昭夫
第199回
10月下旬のEU会議で、ようやくギリシャ救済の合意が成立した。とりあえず、金融市場の参加者はほっと一息ついたところだ。しかし、その背景を見るにつけ、ユーロ問題の“とばっちり”とも言うべき円高には、まだ歯止めがかかりそうにない。

第198回
2004年の法改正時に「100年安心」と言われた年金制度が揺らいでいる。足もとで持ち上がった支給開始年齢の引き上げ議論が、いよいよ国民の不安を増幅させているのだ。年金制度改革は、なぜここまで場当たり的に進められてきたのか。

第197回
アップルを世界最大のITメーカーに押し上げた、稀代の経営者であるスティーブ・ジョブズが逝った。称賛ばかりが先行するジョブズだが、「やり過ぎた経営者」と批評する向きもある。ジョブズがもたらした「IT革命」の功罪を考える。

第196回
欧州ソブリン危機が世界経済に波及することを恐れる投資家たちは、新興国から一斉にリスク資産を引き上げ始めた。とりわけ、世界経済の牽引車となる中国経済には、減速懸念が募っている。「中国ショック」は本当に起きるのだろうか。

第195回
最近、ロンドン在住の著名ファンドマネジャーが出した「欧州株式を買おう」という投資家向け書簡が注目されているという。ソブリン危機で割安感が募っている欧州株は、本当に“買いどき”なのか。その真贋を考えよう。

第194回
なぜこれほど金の価格が上昇し続けているのか――。ここにきて、さすがに多くの人々がこんな疑問を抱くようになってきた。その説明にはいくつかのパターンがあるが、本質を理解するためにも、「金と通貨の恐ろしい事情」を考える必要がある。

第193回
ギリシャ危機は、もはや爆発寸前の様相を呈している。その背景には、ギリシャの救済スキームを巡るEU諸国の足並みの悪さがある。EUよ、いい加減に目を覚ませ。こんな状況を続けている場合ではない。この際、抜本的な解決策を提示したい。

第192回
鉢呂経済産業相の辞任など、野田内閣は発足直後から多くの難題に直面している。「菅首相よりよほどマシ」と、意外な支持率の高さを見せるものの、果たして前内閣と比べて実力はいかほどだろうか。実像と期待の間に横たわる不安を探る。

第191回
「もう廃業しても仕方ない」ある中小企業の経営者は、こう語って肩を落とした。世間では、未曾有の円高で企業の海外移転が進み、産業の空洞化が起きるという懸念が指摘されている。こうした不安は、案外早く現実のものとなるかもしれない。

第190回
足もとで、いよいよ金価格の高騰が顕著になっている。その背景には、ドルの信任が著しく低下していることがある。つまり、世界の通貨制度が根本から揺らいでいるのだ。米国経済が揺らぎ続けることのリスクを、金価格は暗示しているのだ。

第189回
欧米の財政危機に端を発する世界的な金融不安について、「1930年代の世界大恐慌時と状況が似ている」と指摘する専門家が増え始めた。最大の共通点は、政府・金融当局による小手先の弥縫策が、かえって危機を高めてしまいかねないことだ。

第188回
米国債の格付け引き下げやフランスにまで飛び火しようとしている欧州のソブリンリスク。不安が募る金融市場は、大混乱を起こしている。この混乱の背景には、主要国のリーダーシップの欠如がある。これは金融危機ではなく政治危機だ。

第187回
欧州のソブリンリスクや米国の景気悪化懸念が嫌気され、円への資金流入が止まらない。米国債格下げの発表がトドメとなり、円高はいよいよ「未体験ゾーン」へと突入しつつある。投機筋の本音を聞くと、現状は容易に変わりそうにない。

第186回
今回の欧米のソブリン危機で「デフォルト」という言葉が一人歩きしたため、人々の不安は否が応でも高まった。しかし、デフォルトとはそれほど恐ろしいものなのか? 過去を振り返れば、むしろ国の再建が早まったケースも多い。

第185回
欧米のデフォルト騒動と、それに伴う金融危機不安に鑑み、G20金融安定理事会は、世界の大手金融機関に対する規制強化を決めた。しかし、「金融危機連鎖」のメカニズムと封じ込め対策の限界を考えると、各国の取り組みには課題が多そうだ。

第184回
欧米諸国で国債デフォルト不安が噴出している。もはやこれは、各国の債務返済能力の問題ではない。金融危機以降の“ツケ”が、世界的に表面化しているのだ。本来は考えたくもないことが、「世界同時国債デフォルト」の可能性を分析しよう。

第183回
原発の安全宣言から一転、ストレステストの実施を決めるなど、最近の菅政権の言動は国民の理解を越えている。しかし、政治を糾弾するだけでは何も始まらない。なぜこんな政治になるのか突き詰めて考えると、「国民自身の過ち」が見えてくる。

第182回
東京電力の株主総会の結果を見て、多くの国民は不満を募らせている。天災とは言え、原発事故が拡大した責任の所在は結局曖昧なままだ。我々が「株主総会がまともに機能していない」と感じた背景には、日本企業のどんな体質があるだろうか。

第181回
足もとの政治混乱を行動経済学の観点から分析すると、それを招いたのは、結局国民自身の「近視眼的な損失回避行動」と言える。民主主義は万能ではなく、限界がある。あまりにも同じ過ちを繰り返すと、国そのものが沈みかねない。

第180回
米国は5月時点で、国債発行枠を使い果たしてしまった。政府は議会に対して上限の引き上げを要請しているが、財政赤字を問題視する議会の反発は根強い。万一資金繰りが行き詰まれば、米国のデフォルトや世界恐慌の再来が現実味を帯びてくる。
