
真壁昭夫
第191回
「もう廃業しても仕方ない」ある中小企業の経営者は、こう語って肩を落とした。世間では、未曾有の円高で企業の海外移転が進み、産業の空洞化が起きるという懸念が指摘されている。こうした不安は、案外早く現実のものとなるかもしれない。

第190回
足もとで、いよいよ金価格の高騰が顕著になっている。その背景には、ドルの信任が著しく低下していることがある。つまり、世界の通貨制度が根本から揺らいでいるのだ。米国経済が揺らぎ続けることのリスクを、金価格は暗示しているのだ。

第189回
欧米の財政危機に端を発する世界的な金融不安について、「1930年代の世界大恐慌時と状況が似ている」と指摘する専門家が増え始めた。最大の共通点は、政府・金融当局による小手先の弥縫策が、かえって危機を高めてしまいかねないことだ。

第188回
米国債の格付け引き下げやフランスにまで飛び火しようとしている欧州のソブリンリスク。不安が募る金融市場は、大混乱を起こしている。この混乱の背景には、主要国のリーダーシップの欠如がある。これは金融危機ではなく政治危機だ。

第187回
欧州のソブリンリスクや米国の景気悪化懸念が嫌気され、円への資金流入が止まらない。米国債格下げの発表がトドメとなり、円高はいよいよ「未体験ゾーン」へと突入しつつある。投機筋の本音を聞くと、現状は容易に変わりそうにない。

第186回
今回の欧米のソブリン危機で「デフォルト」という言葉が一人歩きしたため、人々の不安は否が応でも高まった。しかし、デフォルトとはそれほど恐ろしいものなのか? 過去を振り返れば、むしろ国の再建が早まったケースも多い。

第185回
欧米のデフォルト騒動と、それに伴う金融危機不安に鑑み、G20金融安定理事会は、世界の大手金融機関に対する規制強化を決めた。しかし、「金融危機連鎖」のメカニズムと封じ込め対策の限界を考えると、各国の取り組みには課題が多そうだ。

第184回
欧米諸国で国債デフォルト不安が噴出している。もはやこれは、各国の債務返済能力の問題ではない。金融危機以降の“ツケ”が、世界的に表面化しているのだ。本来は考えたくもないことが、「世界同時国債デフォルト」の可能性を分析しよう。

第183回
原発の安全宣言から一転、ストレステストの実施を決めるなど、最近の菅政権の言動は国民の理解を越えている。しかし、政治を糾弾するだけでは何も始まらない。なぜこんな政治になるのか突き詰めて考えると、「国民自身の過ち」が見えてくる。

第182回
東京電力の株主総会の結果を見て、多くの国民は不満を募らせている。天災とは言え、原発事故が拡大した責任の所在は結局曖昧なままだ。我々が「株主総会がまともに機能していない」と感じた背景には、日本企業のどんな体質があるだろうか。

第181回
足もとの政治混乱を行動経済学の観点から分析すると、それを招いたのは、結局国民自身の「近視眼的な損失回避行動」と言える。民主主義は万能ではなく、限界がある。あまりにも同じ過ちを繰り返すと、国そのものが沈みかねない。

第180回
米国は5月時点で、国債発行枠を使い果たしてしまった。政府は議会に対して上限の引き上げを要請しているが、財政赤字を問題視する議会の反発は根強い。万一資金繰りが行き詰まれば、米国のデフォルトや世界恐慌の再来が現実味を帯びてくる。

第179回
浜岡原発停止などが一定の評価を得てはいるものの、政府は大震災後の電力供給について、いまだ具体案を明示していない。資源に恵まれず、震災で痛手を負った日本が起死回生を図るために、どんな次世代エネルギー政策を考えるべきか。

第178回
この国の政治はいったいどうなっているのか――。復興議論そっちのけで起きた内閣不信任案騒動に、国民は開いた口が塞がらない。見世物なら興味深いが、これは現実である。そもそも日本人は、なぜこんなリーダーしか選べないのだろうか。

第177回
不動産バブルの中国では、足もとでインフレ傾向が顕著となっている。日本のバブル期の状況と重ね合わせて、「いよいよ中国バブルが崩壊か」という観測が流れ始めた。日本経済にも打撃を与える中国バブル崩壊は、本当にやってくるのか。

第176回
東日本大震災で起きた原発事故について、東京電力はメルトダウンが起きていた可能性を公表した。もっとも、メルトダウンは当初から素人でも勘付いていたことだ。国や企業の情報開示意識は、なぜ戦時中の“大本営発表”のままなのだろうか。

第175回
個人情報の大量流出事件で揺れるソニーだが、これを「同社だけの問題」と捉える関係者はよもやいまい。今回の事件は、次代のIT業界の牽引役と目されるクラウド・システムが抱える「二律背反」というリスクを、改めて浮き彫りにした。

第174回
東日本大震災と大型連休にかけて、世界では様々な事件が起きた。大事件ばかりが報じられている陰で、実は世界経済に「異変」が起きつつあることをご存知だろうか。米国、欧州、新興国の経済が抱える「時限爆弾」の中身を検証しよう。

第173回
日本の東日本大震災に世界の関心が集中する傍ら、気づけば欧州でソブリン・リスクが再燃している。ギリシャの「借金棒引き」見通しまで取り沙汰されるなか、今回のリスク再燃はかつてないほど重大な意味を持つ可能性がある。

第172回
大震災後の為替市場では、被災地の通貨にもかかわらず円が買われ、史上最高値を更新した。その後の協調介入により円安に振れたものの、足もとでは再び円高傾向が強まっている。投資家にとって理解し難い為替相場の背景には何があるのか?
