株主総会2025#23Photo:JIJI

ゼネコン大手の大林組に、株主から厳しい視線が注がれている。大林剛郎会長は2年連続で賛成率80%未満である上に、今年4月に就任したばかりの佐藤俊美新社長も、賛成率急落のリスクに直面していることが分かった。特集『株主総会2025』の本稿では、助言会社や主要投資家11社の議決権行使基準に基づき、大林組の全取締役の賛否を予測したシミュレーションを独自公開する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

大林組・大林会長の賛成率が低迷
4月就任の佐藤新社長にも逆風

 経営トップの再任は、今や通過儀礼ではない。株主総会は、経営陣に対する実質的な審判の場としての重みを徐々に増している。

 議決権行使助言会社や機関投資家の基準が年々厳格化される中、社長や会長クラスの議案で株主の十分な信任を得られないケースが相次いでいる。特に、賛成率が80%を割り込む“危険水域”に入る事例が、近年急増しているのだ。

 中でもゼネコン業界では、経営トップの賛成率が低迷するケースが際立つ。2023年と24年の2年連続で、日経平均株価採用銘柄のうち賛成率80%未満となった経営トップは7人いたが、そのうち3人がゼネコン大手だった(下図参照)。

 そして今年の大林組の株主総会では、賛成率が低迷する大林剛郎会長だけでなく、4月に新社長に就任した佐藤俊美社長兼CEO(最高経営責任者)にも逆風が吹く公算が大きい。

 大林組は24年3月末時点で政策保有株の連結純資産比が33.8%に達し、25年3月末時点でも20%を超えた。主要機関投資家が定める基準に抵触する水準であり、新たに経営トップとなった佐藤氏にも反対票が集中する可能性がある。

 このような状況を踏まえ、ダイヤモンド編集部はレクタスパートナーズが提供する議決権行使予測ツール「AGM(定時株主総会)シミュレーター」を用いて、主要な議決権行使助言会社および機関投資家11社の議決権行使基準に基づくシミュレーションを実施。25年の大林組の株主総会における全取締役選任議案の賛否を予測した。

 賛否の基準は、ROE(自己資本利益率)基準、政策保有株基準などの比較的知名度の高いものに限らず、公開されている基準を全て含む。

 もちろん、実際の投票では個別事情が加味されるため、シミュレーション通りになるとは限らない。だが、株主がどう判断するのか、その傾向を先取りするには十分だ。

 次ページでは、大林組の全取締役に対する機関投資家の賛否予測を公開する。シミュレーションの結果を見ると、佐藤社長の賛成率が急落するシナリオが濃厚だ。その理由と共に明らかにする。