山口 博
小田急線沿いの火事現場近くに走行中の電車が突入し、電車の屋根が燃えるという事故が起きた。消防士も警察署員も運転士もマニュアルどおりのアクションをしたにもかかわらず、なぜこのような本末転倒な事態に陥ってしまったのか。そこには管制不在という深刻な問題がある。

国民生活に関する世論調査の結果が発表された。現在の生活に対する満足度は、調査開始以来最高の水準だ。20代の満足度は全年齢区分中、最も高く、レジャーや余暇に満足し、仕事に打ち込まず、自己啓発に時間を使わないという結果が浮き彫りになった。この結果は望ましいものだろうか。私にはそうは思えない。

働き方改革に着手する企業が増えている。しかし、「人」に起因するストレスは増大していると思えてならない。その原因は、マネジメントの目的が、パフォーマンス向上ではなく、上司の言うことに従わせることに変質してしまっているからではないか。その問題を解消する方法がある。

トヨタ自動車が裁量労働の範囲を拡大した。同社での演習経験をふまえると、社員の自律裁量というモチベーションファクター(意欲が上がりやすい要素)に対応した打ち手であると、私には思える。働き方改革は、モチベーションファクターをテコにした実行にかかっている。

富山市の機械メーカー、不二越の本間博夫会長の「富山から採用しない」発言が袋叩きにあっている。県知事が労働行政を、弁護士が労働法を振りかざして、本間氏を包囲している。しかし、私には、「王様は裸だ」という事実を叫んだ人を包囲しているように思えてならない。しかも、この構図がトンデモ人事の状況に酷似している。

組織の掟というものがある。多くの場合、組織の掟は、無意識のうちに身に付いていて、知らず知らずのうちに実行しているものだ。しかし、その掟が明らかに常識から外れていたら、トンデモない事態が生む。無意識のうちに身に付いてしまっていて、本人がその常識外れに気づかない分、事態は深刻だ。

教師による生徒への暴力、議員による秘書への暴言…不適切どころか、傷害事件と目されるトンデモ事態が後を絶たない。そこには、学生だろうが秘書だろうが、相手を人として尊重する意識が全く欠落していると言わざるを得ない。

メルマガ発信でサイバーテロ犯認定!セキュリティ規則盲従の落とし穴ウィルス感染などサイバーテロの脅威が高まる中、各社はこぞって対応マニュアル作りを行っている。しかし、マニュアルが一人歩きして、本人に確認すれば済むことを、数部門のリレーをしてしまうという事態に直面した。私自身がサイバーテロ犯と目されてしまったのだ。

東京都庁20時を筆頭に、オフィスの照明を一斉消灯する取り組みが、まるでブームのように広がっている。しかしこれは、枠組みマネジメントの典型で、取り返しのつかないトンデモ状態を生み出してしまうのだ。

組織開発・人材育成に関する全国意識調査を行ったところ、わが国企業の人事部が期待されていないどころか、適切でないとまで思われているトンデモな状況が浮かび上がってきた。働き方改革の担い手になることはおろか、人事部の存在そのものの是非が議論されるレベルと言わざるを得ない。

プレミアムフライデーで、金曜日の15時以降に、社内イベントを企画し社員を参加させる取り組みに、私は耳を疑った。30年変わらぬその発想に、社員の消費行動を阻害するだけではない、社員の自律性を損ない続けてきたトンデモ人事部の元凶を見た。

働き方改革実行計画は、自社における展開を実現してこそ意味を持つ。しかし、わが国企業には、計画の実行を阻む断層がある。その断層を解消しない限り、働き方改革の実現も、自社の戦略の実現もかなわない。

第67回
年度の変わり目は何かと「面接」が多い。上司と部下の面接、新メンバーとの面接、採用面接…。面接時の問答による見極め確度を高めるためにはどうすればよいか。多くのビジネスパーソンが直面している課題だ。

第66回
ドッグイヤーならぬ100倍速で変化するインセクトイヤーにあって、米国では秒単位のトレーニングが横行し、わが国でも1デイリクルートにトライする企業が増えてきている。30秒トレーニングや1デイリクルートの是非が議論され始めているが、議論すべき論点はどこにあるのだろうか。

第65回
伊達マスクがはやっている。風邪や花粉症ではないけれども、マスクを付けることが常態化している人も少なくない。実は、この伊達マスク、ビジネススキル向上を妨げ、ひいてはわが国ビジネスを停滞させてしまうおそれがあるのだ。

第64回
文部科学省事務次官も関与した組織的な「天下り」のあっせんは、同省人事課がご丁寧にも文書作成するというトンデモな事態である。同省に教育行政を仕切る資格はない。しかし、そのこと以上に、この組織を解散しなければならない理由がある。

第63回
わが国を代表する企業が、次々と労働基準法違反で摘発されている。そして、20時一斉消灯など強硬手段に出る企業や団体が増えている。しかし、一斉消灯は過長労働問題の解決にはならず、むしろ逆効果である。

第62回
リーダーシップ演習を実施していると、勘違いマネジメントが横行していることに気付く。部下の育成を阻害しているのは、部下の適性、努力不足と決めつけられがちだが、上司が部下の意欲を粉砕している事例が実に多いのだ。

第61回
ピコ太郎「PPAP」の勢いが止まらない。公式チャンネルの動画視聴回数は1億回を超え、世界一だ。ビジネスパーソンの表現力向上プログラムを実施しているグローバルトレーニングトレーナーとしての目で見ると、実は、それには明快な理由がある。

第60回
「働き方改革実現会議」で、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討」が進んでいる。しかし、その検討内容は、私の目からみれば過去の失敗の二の舞を演じるように思えてならない。忘れ去られている重要な論点があるのだ。
