
塚崎公義
昨年度の国際収支統計が発表され、経常収支が大幅な黒字であることが明らかになった。経常収支の大幅な黒字は、外貨の売りを増加させ、円高ドル安を招く要因と考えられているが、実際にはそうなっていない。その理由について考えてみよう。

財政赤字を容認する「MMT理論」は一理あるが、やはり危険な理由
米国でMMTと呼ばれる理論が話題になっている。「自国通貨で借りている財政赤字は紙幣を印刷すれば返せるのだから巨額でも構わない」というものだ。筆者は財政赤字容認派であるが、それでも無条件の財政赤字容認論には危うさを感じている。

令和元年の日本経済は、バブル最盛期であった平成元年の日本経済より豊かである。平成時代の日本経済というと、「長期停滞」のイメージしかないが、それでも経済は成長し、日本人の生活は豊かになったのだ。

まもなく令和時代が幕を開ける。平成時代を振り返ると、日本のマクロ経済は「バブル崩壊後の長期低迷期」であったが、令和時代は平成時代に問題とされていたことが一気に解決し、最初の10年間は黄金期とでも呼ぶべき素晴らしい時代となろう。

人手不足倒産が増加している。倒産した企業の経営者にとっては悲惨であり、同情を禁じ得ないが、これは従業員と日本経済にとっては好ましいことである。

介護士が不足している。介護労働実態調査によると、介護職員に「不足感がある」と答えた事業者は66.6%と、4年連続の悪化。政府は、外国人労働者の受け入れで不足に対応しようとしているが、その前に改善すべきは日本人介護士の待遇だ。

日銀短観の業況判断DIが大幅に悪化した。鉱工業生産指数が減り、景気動向指数が悪化していたため、短観の悪化は予想されていた通りであったといえよう。“景気弱気派”が見ると景気後退の気配が濃厚なようだが、いまだに景気は後退しないと考える。

米国で長短金利差が逆転、「景気後退の前兆なのではないか」との観測が広がって、先週末の米国株は大きく値下がりした。だが、そもそも長短金利が逆転すれば、景気は後退するのだろうか、考えてみたい。

EU離脱を巡って、イギリスの政治が混迷しており、経済面での混乱も予想されている。日本経済への影響を懸念する声も聞かれるが、過度な懸念は不要だろう。

労働力不足が深刻さを増している。政府は外国人労働者(技術者などを除く単純労働者、以下同)を受け入れることにしたが、その前に日本人労働者の待遇を改善するのが筋だ。そこで労働力不足と日本人労働者の待遇について考えてみる。

大学生の就職活動が本格的にスタートした。就活生の保護者は、さぞかし心配であろう。そこで、就活生の保護者のあり方について、久留米大学商学部の教授かつ就職支援責任者である塚崎公義氏がアドバイスする。

経団連が学生の就職活動の時期を定めないことにしたため、就職活動のルールが変わるかもしれないといわれている。「それならば新卒一括採用も変わるかも」と考える人も多いようだが、そうではなさそうだ。

最近、銀行が「決算が苦しいので、信用力に問題がある融資でも構わず貸している」という報道を目にする。実はそうした「ゾンビ企業」を生かしておく方が得だという事情もあるのだ。

2019年1月で、景気拡大期間が戦後最長となったもようだ。主な理由は、景気の拡大が緩やかであったこと、そして海外の景気に大きな波乱がなかったことが挙げられるが、「少子高齢化」もその1つと考えられるのだ。

1月の月例経済報告が発表され、「景気は、緩やかに回復している」という景気判断を維持した。これを受け、今回の景気拡大は戦後最長になったとみられる。しかし、人々はそれを実感していない。その理由を解説しよう。

昨年の中国の成長率が6.6%で、28年ぶりの低さだった。日本の感覚でいえば十分高い成長だが、中国の専門家は憂えているようだ。今回は、戦後の日本経済の歴史を考えながら、中国の成長率低下がこれと似ていると考える理由を示す。

「米中貿易戦争」が激化しつつあり、米国の景気にも悪影響が出そうな様相を呈してきた。仮に米国の景気が後退を始めたとしたら、日本経済はどのような影響を受けるのだろうか。

政府は、外国人労働者の受け入れを拡大する方向だ。しかし、それに伴って行政コストなどが発生する。それを、国民に負担させるのは「受益者負担」の原則から不公平。ならば、外国人を雇用する企業に負担させるべきではないだろうか。

昨年12月から年初にかけて、世界的に株価が暴落したが、同時に円高となった。世界の金融市場が動揺すると「投資家のリスク回避のために、安全資産である円が買われた」という報道とともに円高になることが多い。しかし、それは本当なのだろうか。

日本経済に関して、筆者は楽観的な見通しをメインシナリオとしている。しかし昨年は、海外でリスクの“タネ”が少なからず発生した年だった。そこで、年初に当たり、念のためリスクシナリオについて考察しておくことにする。
