櫻田 毅
部下に将来のなりたい姿をイメージさせ、そこを起点として現在にさかのぼりながらキャリアプランを考えていく手法があります。経営計画の策定などに使われる「バックキャスティング」と呼ばれる手法ですが、ことキャリアプランに関してはこの手法は現実的とはいえません。もし、本当に部下のキャリアを支援したいと思うのであれば、上司がすべきことは他にあります。

部下への権限委譲ができないという管理職の悩みをよく聞きます。信頼して任せたいのだが、任せられる人がいないとのこと。結局、自分で仕事を抱えてしまい、目の前のことに忙殺されている日々から抜け出せないそうです。しかし、日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験から見ると、このような管理職の皆さんは、権限委譲について根本的な勘違いをしています。それが理解できない限り、この問題は解決されません。

第7回
「スピードと質のバランスをどう取るかが難しい」と口にする人ほど、スピード感もなければアウトプットの質も低いという事態が起きています。「スピードと質はトレードオフ」という古い発想と、「質」とは完成度のことだという致命的な勘違いがあるからです。変化が激しく不透明な時代において、スピードと質の問題をどう理解しておくべきなのでしょうか。

どの会社にも、うまく上司を巻き込みながら大きな仕事をしている人たちがいます。「できる人」として確固たる存在感を示し、出世街道を歩んでいる人たちです。一方、なかなか上司を巻き込むことができずに存在感を示せない人たちもいます。「チームのために正しい」と信じて提案しているのになぜか賛同を得られない……。そこには、上司への提案に際しての「ある勘違い」が存在しています。

部下自身に考えてもらおうと、あえて自分の考えを言わずに、「あなたはどう思う?」と問いかける――このような上司の話をよく聞きます。しかし、いくらそう問いかけても、部下がなかなか自分で考えて行動するようにはなってくれないと頭を抱える上司は少なくありません。この問題は、人材育成に関する上司側の「ある勘違い」が引き起こしていると言えます。

ジョブ型雇用の拡大とともに専門性の高い人材が増えてくる中で、自分よりも専門的な知識や経験が優れている部下をどれだけ生かすことができるかが、チーム全体の成果に大きく影響してきます。「優秀な部下には自由にやらせることが人材活用の鉄則だ」という話をよく聞きますが、これは、実は本人にとってもチームにとってもマイナス要因でしかありません。なぜ「自由にやらせる」ことが悪影響なのでしょうか。

「時間」に対して高いコスト意識を持つ外資系企業にとって、複数のメンバーを拘束する会議はジャラジャラとお金が流れ出ていく感覚です。にもかかわらず、彼らが会議を開くのは、かけた時間コストとは比べものにならないほどの大きな効果を生み出すことができるからです。一方で、それができない人は、時代に即した仕事のあり方に適応できない人として淘汰(とうた)されていきます。日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験をもとに、会議で組織成果を高めているマネジャーと、それができないマネジャーの違いについて解説します。

従来、過去の実績の延長線上にあった役員ポストの位置付けが変わりつつあります。技術革新とグローバル競争が日々目まぐるしいスピードで進む時代においては、今の事業や組織の延長線上に会社の未来を描くことができないからです。では、どのような人が今役員として求められているのか。米国系企業のマネジング・ディレクターの選考基準と比較しながら、変わりつつある日本企業の役員選考基準を解説します。

変化が激しく絶対的な正解がない時代においては、迅速な決断と行動を繰り返しながら最適解を模索していくことが、組織の成功を手にできる早道です。にもかかわらず、多くの企業で決断の遅い管理職が問題となっています。日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験をもとに、迅速に決断できる人は何が違うのかについて解説します。

日本特有の「メンバーシップ型」の雇用システムが、「ジョブ型」へと移行しようとしています。この変化で最も影響を受けるのは、メンバーシップ型で昇格してきた管理職の人たちです。日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験をもとに、ジョブ型で評価される管理職とそうでない管理職の違い、そしてジョブ型の管理職が目指すべき姿を解説します。
