「5年後どうなりたいの?」と部下に聞く上司が根本的に間違っている理由Photo:PIXTA

部下に将来のなりたい姿をイメージさせ、そこを起点として現在にさかのぼりながらキャリアプランを考えていく手法があります。経営計画の策定などに使われる「バックキャスティング」と呼ばれる手法ですが、ことキャリアプランに関してはこの手法は現実的とはいえません。もし、本当に部下のキャリアを支援したいと思うのであれば、上司がすべきことは他にあります。(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)

「5年後どうなりたいか?」と聞かれて
困惑する若手社員

 IT関連企業に勤める30代のAさんから、「ちょっと聞いてくださいよ」的なノリで、次のような話を聞きました。

 上司との面談で、「5年後どうなりないの?」と聞かれた。しかし、そんな先のこと分かるわけがないし、今の会社にいるとも限らない。そこで、正直に「分かりません」と答えると、小学校の作文に将来の夢をリアルに書いて実現した有名アスリートのことを引き合いに、将来像を言葉にすることは重要だと力説された。面倒くさいので、「ちゃんと稼げる人になっていたいです」と答えて終わりにしたとのこと。

 こう笑いながら話すAさんですが、私も、もっともだと思います。予測できない先のことを考えるよりも、早く稼げる力を身に付けたいという彼の気持ちは、変化が激しく不透明な時代を生きていく若手社員の本能として的を射ているからです。

 にもかかわらず、終身雇用で変化が緩やかな時代の発想のまま、「5年後どうなりたいの?」とのんきな質問をする上司に、適切なキャリア支援ができるとは思えません。今の時代に、上司として部下のキャリア支援のためにすべきことは別にあります。