ここ数日、上海のモバイルTVの取材班を連れて、北陸を中心にいくつかの県を回って取材してきた。その取材内容は近いうちに、上海の地下鉄、バス、マンションやオフィスビルのエレベーターホールに設置されているテレビモニターから放送されることになっている。
放送を楽しみにしていながら、取材の現場で感じたこともいろいろあり、特にそれらの問題点には触れずにはいられない。
そのなかのある県を訪問したときのことだ。夕暮れ、到着した私たちを連れて公園の夜景を見に行った。そこにある「世界一美しい」と評判の某外資系のカフェを、夜景とともに取材しろと言われたのだ。これらの景色を自慢の観光資源として懸命にアピールしようとした若い女性担当者の無邪気な笑顔に、私はただただ、あきれることしかできなかった。相手がもうすこし年嵩のある男の担当者なら、おそらくその場で引き揚げると宣言しただろうと思う。
ネオン氾濫が問題になっている上海から来たメディアを通して、暗闇の中から浮かび上がる少しばかりの照明とガラス張りのカフェの存在を中国の観光客に訴える勇気には感心するが、立案担当者の不勉強ぶりも浮き彫りにされた。なにしろ、特定の喫茶店にスポットを当てることは広告行為に手を貸したと誤解されやすく、その放送が認められない可能性が非常に大きい。
某山岳観光地のレストランでも信じられない場面に遭遇した。座っているお客さんに断わりもせずに、昼食の定食をいっぱい乗せたトレイをその女性客の頭の真上から渡した店員がいた。「危ない」と叫ぶ前に、そのサービスの乱暴ぶりに逆に圧倒された。
地方自治体の「おもてなし条例」の作成にかかわったことのある私から見れば、この県の観光業界では、おもてなしに関する再トレーニングを行う必要があるのでは、と思った。
中国人観光客に人気の
「革命ゆかりの地」旅行
そこで最近、読んだある記事のことを思い出した。北京青年報という新聞が取材・配信した「中国人を呼びこむため、多国がレッドツーリズム(紅色旅遊)ルートの開拓に努める」という記事だ。欧米の国々がどのように中国人観光客向けの観光商品を開発するのか。それを読めば、その努力の一部が透けて見えてくると思う。