これが話には聞いていた東久留米支店の日常だった。

 東京都東久留米市の高齢化率は26.1%で、東京都の平均より高い。東久留米支店の近くにある団地は高齢化率がさらに高く、認知症の人も多い。

 同支店では日々、団地の認知症高齢者によるトラブルが起こる。「貯金が消えた」「口座を凍結された」「行員に金を取られた」と騒ぐ客もいれば、公共料金を払いに来たのか、貯金を下ろしに来たのか、目的が分からなくなってしまう客もいる。

 時に認知症の人の金を吸い上げようと、友人と称し付き添いでやって来て大金を引き出そうというやからもいるから油断ならない。

 心配な客については、介護や福祉の相談窓口である市内の地域包括支援センターに相談するが、センターには他からも大量に相談が押し寄せている。「近隣住人が急に痩せてしまった」「ごみ屋敷になっている」といった団地住人の認知症に関連する相談も尽きない。

 医療や介護保険のサービスで賄い切れない問題も多い中、団地で自立した生活をする高齢者が支援に協力したり、新聞配達販売店の組合と見守り協定を交わしたりして、乗り切っている状況。「周囲の支えがなければ、認知症の人たちは立ち行かなくなる」(市担当者)という。

高速道路の逆走は認知症疑い4割
免許取り上げに舵

 日本全体に目を移すと、認知症を含む高齢者のトラブルは深刻の一途をたどっている。

 15年1月末、警視庁は首都高速道路と会合を開いた。目的は近年、相次いでいる高速道路での“逆走”事故対策。会合では、インターチェンジでの誤進入を阻むための防止柵や、逆走を感知するセンサーを設置し、警察や他のドライバーに警告を発するシステムの導入などが話し合われた。背景は、認知症の疑いがある高齢者による逆走事故の多発だ。

 14年9月、首都高速道路を含めた高速道路6社は、11~13年の3年間における高速道路の逆走事案をまとめ、その実態を明らかにした。発生数541件のうち、年齢別で65歳以上の高齢者が7割。健康状態別では4割近くが認知症の疑いがあるとした。

 首都高速では15年1月7日にも、認知症の疑いがある男性高齢者が、逆走死亡事故を起こしたばかり。逆走は重大な事故につながりやすいため注目を浴びるが、認知症を含めた高齢者が起こす事故のごく一部にすぎない。

 近年、交通死亡事故の数そのものは、自動車の安全性能の向上などによって右肩下がりだ。ところが、その中身を見ると64歳以下の死亡事故者数はこの10年で、半数以下になったのに対し、65歳以上のそれは微減。12年以降は65歳以上が64歳以下を上回る逆転現象となっている(下左図参照)。

 中でも深刻なのが、高齢者ドライバーが事故原因(第1当事者)となっているケースだ。死亡者数と同様、この10年で64歳以下は半減した一方、65歳以上は横ばいで推移する(上右図参照)。このうち、認知症患者が「逆走事案と同程度の割合を占めている」というのが、関係者の共通の見立てだ。