10月16日に閉幕した仏パリモーターショーでは、独自動車メーカー3社の「電気自動車(EV)シフト」が鮮明になった。独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル不正の発覚以降、ドイツ勢は電動対応車の主役をプラグインハイブリッド車(PHV)からEVへと転換している。その狙いはどこにあるのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

ヘルベルト・ディースVW乗用車ブランドCEO。「不作」との下馬評だったパリサロンで、EVシフトの象徴的な新型車となった

「今こそ、変革のときだ。われわれは、世界のEV市場のリーダーになる」。独フォルクスワーゲン(VW)の乗用車ブランドトップのヘルベルト・ディースCEOは、そう高らかに宣言した。

 VWは、9月末に開催された仏パリモーターショーで、次世代電気自動車(EV)のコンセプト車「I.D.」を世界初公開した。一度の充電で走ることができる航続距離はなんと600kmと、日本でおなじみの日産「リーフ」の2倍以上を誇る。このモデルを、2020年にVWの看板車種「ゴルフ」並みの普及価格帯で販売するというから、EVに掛ける意気込みは相当なものだ。

 すでに、VWは25年までに30車種以上のEVを投入し、世界販売台数に占めるEVの構成比を現時点の1%から最大25%へ引き上げる計画を発表している。昨秋のディーゼル不正で傷ついたVWブランド。新生VWを打ち出すための武器として、EVを大々的に担いでいるのだ。

もう一つの象徴となったベンツのEV専用ブランド「EQ」。新ブランドの立ち上げで、EVシフトへの「本気度」を示した(上)/BMWは既に電動車ブランドとしてiシリーズを立ち上げているが、今後さらなる車種展開で他社に対抗していく(下)
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 VWだけではない。パリモーターショーでは、独自動車メーカー3社は共に、EVシフトの姿勢を鮮明にした。独ダイムラーは、メルセデス・ベンツのEV新ブランド「EQ」を立ち上げると発表。最長500kmを走行可能で、20年に市販化を目指す。また、独BMWもi3の航続距離を300kmに伸ばした改良版を初公開した。

 ドイツ勢が一斉にEVへと舵を切った背景には、欧州における燃費・排ガス規制の厳格化がある。

 まずは燃費規制。欧州では、2021年までに企業平均のCO2排出量を95g/km以下にしなければならない。従来に比べて、3割近い削減を求められており、特に大型車の構成比が高いドイツ勢にとっては非常に厳しい。