投手が高額を稼ぎやすい一方で、捕手で高額を得ている選手は少なく、平均年俸で比較しても他のポジションより低い現実がある。著者の考えでは、捕手は野手の戦績で一般に使われている打率やホームラン数、打点といった指標で優れた成績を残すことは困難である。捕手は打撃よりも守備において投手をリードするインサイドワークがとても重要で、ここに全精力を注ぐことになる。また、捕手を評価する盗塁阻止率やパスボール回避率といった特有の指標もあるが、他の指標に比べれば圧倒的に地味なため、報酬の査定において大きく考慮されないのが原因だという。

◇なぜホームラン王や最多勝利選手は高額を稼ぐのか

 プロ野球では一部のスター選手が高額年俸を稼ぐ。この仕組みを解き明かすために、経済学では三つの理論を提供してきた。

 一つ目は「限界生産力原理」である。限界生産力とは、労働者が働く単位を1単位増加させたときに生じる生産量の増加分のことで、労働投入量はこの限界生産力と実質賃金の等しい点で決定するというのが限界生産力原理である。つまりプロ野球の例で考えると、能力が高い選手は試合にたくさん出るなどして労働投入量が増加すると、生産量が多くなり実質賃金も高くなる。ホームランを多く打つ選手、勝ち星の多い投手など生産性の高い人が高い報酬を得るのである。

 次はトーナメント理論である。より上に上がった者(トーナメントを勝ち抜いた者)がより高い報酬を受けとることができる仕組みにしておくことで、選手の勝利へのインセンティブを高くすることができる。よりこのインセンティブを高めるために、通常1位と2位の間には大きな差が設けられることが一般的である。

 最後の「スーパースターの経済学」は歌手や芸能人を念頭におきながら考えられた理論だ。一番人気の歌手と二番人気の歌手の間には、実力、人気共に大差はないはずである。しかし一番手の歌手は「一番」が理由となり、テレビ出演やライブの観客動員が増え、続いてチケット代や視聴率も高くなり、雪だるま式に高い所得を稼ぐことになる。野球の場合だと、ホームランを一番多く打つ選手は、チームの勝利に大きく貢献する。チームが勝利すればそのチームの試合を観に来る人の数が増加し、テレビ放映も多くなってチームの収入が増加する。そこで得た収入を最も貢献している選手に還元することは理に適っているといえる。

◇プロ野球選手とサラリーマンはどちらが稼ぐのか

 野球選手の選手としての寿命は平均すると10年ほどなので、現役を引退後少なくとも20~30年は別の職に就いて仕事をせねばならない。球団で監督やコーチの職に就けば、かなりの年収が得られる。監督であれば1億円、コーチであれば1000万~3000万円と言われており、平均的サラリーマンより高い年収となる。しかし60~65歳まで続ける人はごく稀なので、ある年齢に達すると突如無収入になる人は多い。ただそもそも監督やコーチになるような人は現役時代もかなり活躍した人であることがほとんどなので、現役時代から十分に貯えがあると考えてよいだろう。