来年2012年の到来が予測される「電気自動車(EV)の世界的なブレイク」を前に、アメリカではEVに関する様々な流れが生まれている。

 まず昨年末に日米で電気自動車「リーフ」を投入した日産自動車の動向から見てみよう。2011年1月14~16日、テキサス州ダラス郊外。ダラス・フォートウォース国際空港近くにあるNissan Motor Acceptance社の駐車場を拠点として、日産は「リーフ」の一般向け試乗会「ドライブ・エレクトリック・ツアー」ダラス地域編を開催した。

米テキサス州ダラス郊外で開催された日産の電気自動車「リーフ」の一般向け試乗会。

「気にせず、加速をトライして下さい!床まで(アクセルを)思い切り踏み込んで頂いて結構なのですよ」。

 助手席に座る50代とおぼしき男性の米国人説明員が、慎重に運転していた筆者にはっぱをかけた。このとき走行していた一般道路の制限速度は35MPH(約56km/h)。その範囲内で筆者が加速を心がけていることが歯痒いようだ。我々が乗るパールホワイトカラーの「リーフ」を、他の「リーフ」試乗車たちがゴボウ抜きしていったからだろう。

 日産は昨年10月から今年3月にかけて、全米23箇所での「リーフ体験ツアー」を展開している。一昨年の同時期には、「ティーダ」で仮装した実験車両の同乗走行を通じて、第一弾の電気自動車訴求戦略を行っていたが、今回は一般の顧客に量産型「リーフ」を公道試乗してもらうという試みだ。

 受付で誓約書にサインすると、10~20人で1組というツアーが始まる。工程は4つ。①日産の電気自動車の歴史/バッテリーと充電についてのレクチャー。②リーフの使用に関する全般的なレクチャー。③航続距離に関するレクチャー。そして④約3kmの公道試乗だ。全部で30分弱かかった。

 日産は日本では昨年、横浜と北九州で一般向け試乗会を開催した。だが、走行場所は公道ではなく、駐車上の一部を使ったクローズドエリア。コースはパイロンで作られ、走行速度も最高で20km/h程度。レクチャーの内容もアメリカで行われているほど充実はしていなかった。

 また、今回参加したダラスでの「リーフ体験ツアー」では、筆者が本連載で度々指摘した「航続距離が使用条件でかなり変化すること」について、初期の情報として十分と思われる説明がなされていた。日本でも是非、「航続距離」について日産から一般向けに、様々な使用条件での実用航続距離を説明して欲しいが、現時点では実施されていない。その理由について、ある自動車業界関係者は「(日本の)公正取引委員会から(いち企業が独自の考えで訴求するのはいかがなものかと)ストップかかった」と漏らした。