そもそも、ストレスとはなにか。実はストレス自体は動物が生きていく上で欠かすこのできない大切なメカニズムなのだ。もしサバンナであなたがライオンに遭遇した場合、とっさに「闘争、逃走」本能が働く。心拍数が急激に上がり血圧も上昇する。肝臓からは糖が放出され、瞬時にエネルギーが供給される。この状態が「ストレス反応」だ。敵と闘うか、それとも逃げるか、どちらを選ぶにしてもストレス反応が起きなければ私たちの身体は最大のパフォーマンスを発揮できないのである。

 しかし、人間の生活環境は大きく変わり、現代社会は慢性的に私たちにストレス反応を引き起こすようになっている。人間が原始的に生きていた際に必要だった生存メカニズムが、現代の私たちには大きな負荷となっているのである。

うつ病患者の脳波は
海馬が委縮している 

 ひとたびストレスを受けるような環境に身をおくと脳内では扁桃体が活性化する。慢性的にストレスにさらされると扁桃体が肥大化して、少しのストレス要因でも過剰に反応する事になるという。扁桃体が活性化すると「不安や恐怖に対処せよ」という指令が視床下部に伝達される。すると副腎からストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され血流に乗って全身にいきわたり臓器や自律神経が様々な反応を起こす。

 特にやっかいなのが「我慢するストレス」だという。これは一時的なアップテンポ型のストレスとは違い、慢性的に受けるストレスだ。このストレスは職場や家庭の人間関係などに起因する場合が多い。また慢性的なストレスでは過去に起きた出来事や未来の不安を繰り返し想像するまどといった、人間がつい行ってしまう悪い思考習慣で増幅されるものもある。これを「マインド・ワンダリング」といい、私たちは平均して生活時間の47%を自分の思考が生み出した不安や恐怖感にさいなまれているという。

 我慢するストレスがどのように、そしてどれほど人間の身体に影響があるのかを見てみよう。ストレスを感じた時に副腎から分泌されるコルチゾールは最終的に脳に吸収され無害化されるのだが、慢性的にストレス反応が起きていると、過剰に分泌されたコルチゾールが脳内に溢れ、海馬の神経細胞を破壊する事が解明されている。実はこの現象がうつ病に大きく関わっているのだ。うつ病患者の脳はコルチゾーに蝕まれ海馬が萎縮しているのである。