一生勉強を続けていくということは、並大抵の努力ではできません。日々の活動をいかに変えていくか、そのためには、感情をうまく利用するといいでしょう。シリーズ6万5000部を突破した『ずるい勉強法』より、習慣化する方法をお伝えします。

感情をゆさぶり、習慣にする

 多くの人は、何か行動を起こす前に、こう考えるのではないでしょうか。

「失敗したらどうしよう」
「うまくいかないかもしれない」

 新しいことを始めるときや、勇気を持って決断しなくてはならないような事態のときほど、人はこのように悲観的に考えてしまいます。その結果、行動できなくなってしまうことが多々あります。

 しかし、それでは自分の道は開けません。

 中国の兵法書の古典『孫子』のなかに、このような言葉があります。

「将、吾が計を聴きて之を用うれば、必ず勝たん」

 万全な準備をしておけば、心配しなくても勝てるという意味だと言われています。

 つまり、準備の段階ではリスクに対する解決策を練りながら悲観的に考え、行動を起こすときは楽観的に動く、ということです。

 私自身も、日頃、このような思考で行動するようにしています。

 リスクについては、最悪のケースをとことん考えておきます。たとえば、「もし事務所の経営が失敗したら、みんなが離れていく」「離れていったら、事務所がなくなるかもしれない」「そうなったら、人から恨まれるかもしれない」などと、徹底的に悪いことをシミュレーションしておくと、たいていのリスクには動揺せずに対応することができます。

 また、そこまで自分を追い込むと、いわば「背水の陣」で、「そうならないためにも頑張らないと!」と、気持ちが奮い立ちます。

 とことん悲観的に考えたあとは、とことん楽観的に行動します。

「ここまでリスクを考えて準備したのだから、まぁ、何とかなるだろう」という気持ちで飛び込むのです。そして、できるだけ成功するイメージを思い描くようにします。

 事務所を立ち上げたとき、私は「世界一の法律事務所をつくる」という大きな夢を掲げたものの、実際はお金も人脈もありませんでした。ですが、「最悪の場合は、破産すればいいや」と、楽観的に考え、夢に向かって飛び込んでいきました。もし何も行動せず飛び込まなかったら、今の私はいないでしょう。

 動かなければ何も始まりません。最初の一歩が次の行動につながります。「行動が行動を生む」のです。行動した結果、いいことがあったり、成功したりすると、人の脳にはドーパミンという快楽を感じる神経伝達物質が分泌されます。それにより、「もっと行動しよう!」と、次のステップへと続いていくのです。

 たとえば、みなさんがある有名な講師のセミナーに参加したとしましょう。話に感銘を受けたみなさんは、すっかりその先生のファンになりました。セミナーが終わって、「質問はありますか?」と投げかけられ、みなさんは躊躇します。

「質問しなければわからないままだ」
「ここで質問をしなかったら、もう二度とチャンスはないかも」
「変なことを聞いて恥をかいたらどうしよう」

 しかし、このように考えて行動してみるのです。

「勇気を出して質問したら、先生と親しくなれるかもしれない」
「恥をかいても、どうせ周りは知らない人ばかり。もう会うこともないだろう」

 すると、心がラクになり、「とりあえず質問してみよう!」という気持ちになります。そこでうまくいき、先生と親しくなれれば、さらにその先の行動にもつながります。

 ここで大切なのは、「最初から完璧を目指さない」ということです。
誰もが最初から100点を取ることはできません。最初は10点でも20点でもいいのです。続けていけば、少しずつでも確実に成果は上がっていきます。