第6回でもお伝えしたコミュニケーションは、凡人がエリートを出し抜くためにも重要です。今回は、失敗しているふりをしながら相手から貴重な情報を得る技術を、『ずるい勉強法 エリートを出し抜くたった1つの方法』から紹介いたします。
弱みを見せることによって、相手を動かす
人間には、自分より弱い者、知識や経験が少ない者に対して、「助けてあげたい」「何か教えてあげたい」という意識が備わっています。
これは、心理学でも「アンダードッグ効果」と名付けられ、立証されています。アンダードッグとは「負け犬」を意味し、一生懸命頑張っている人が失敗したり報われなかったりしていると、助けたくなるという心理効果のことです。
今回は、そのような人間の本能を刺激して、有益な情報を得る方法をお伝えします。
それは、「『失敗している』ようにわざと見せる」ことです。
失敗とは、言い換えれば、「弱みを見せる」ことでもあります。弱みを見せることによって、相手は、何とかしてあげようと、救いの手を差し伸べてくれます。
アイドルや歌手の卵が「手売りで1万枚売ったらデビューできるんです!」とCDを宣伝するケースがありました。商品でも、「注文しすぎてしまったので、助けるつもりで買ってください!」というようなキャッチコピーを目にします。これと同じような手段を、交渉でも使うのです。
私は、対人関係のコツを知りたいと思ったときに、対人関係がうまくいっている人に、あえて自分の失敗談を話したことがあります。その結果、「相手に対し、過度に感情移入や期待をしない」「人は考えていることと言っていることが違うことがあるので気をつけたほうがいい」など、人と上手につき合うノウハウを聞き出すことができました。
本当はそれほど失敗していないことでも、失敗したと伝えると、相手が助けてくれ、その結果、ノウハウを聞き出すことができます。
もっとも、気をつけてほしいのは、「弱み」と「頼りなさ」は違うということです。
頼りなさが前面に出てしまうと、「助けたい」という思いよりも「こいつ、大丈夫か?」と、相手に不信感を抱かせてしまいます。心配や不安が先に立ち、自分のもとから離れていってしまうかもしれません。
弱みは、あくまで頼りがいがある人が見せることが前提です。人から尊敬されているリーダーが、ふとしたことで失敗すると、周りは「協力して窮地を救おう」と思うようになります。普段しっかりしている人が、弱音を吐いたり、相談を持ちかけてきたりしたら、「よっぽど困っているんだな」と思って、親身になって相談に乗ってくれるはずです。
また、あえて「知りません」「わかりません」と言ってみることも大事です。
「わからないことは『わかる』と言う」こととは真逆になりますが、これも弱みの一つで、相手に「知らないことがあるなら教えてあげよう」と思わせる効果があります。
このように書くと、あえてそういう行為をして相手を利用しようと言っているように捉えられてしまいそうですが、そうではありません。ときには人を頼ることも大切だという意味です。
何でも自分一人でやるのは、限界があります。ラクして結果を出したいのであればこそ、謙虚に教えを請う姿勢を心がけましょう。