2004年、映像配信ビジネスの事業化が疑問視されていた時代に映像配信サービスを開始したNTTぷらら。同社の板東浩二社長は「次世代の作り手に話を聞くこと」を常に心がけ、イノベーションを起こしてきた。まだまだ進化が続く映像配信ビジネスは今、どこへ行こうとしているのか?対談連載の第1回は、日本屈指のイノベーター、中村修二氏(青色LED開発でノーベル賞を受賞)に話を聞く。(構成/フリージャーナリスト 夏目幸明)
宇宙旅行から発電まで
レーザー光開発最前線
中村修二氏は、言わずと知れた、青色LEDの開発者。2014年にノーベル物理学賞を受賞している。一方、板東浩二社長は映像配信サービス「ひかりTV」・インターネット接続サービス「ぷらら」等を手掛けるNTTぷららの社長を約18年務める人物だ。将来、映像配信ビジネスが大きく成長することを予見し、04年に映像配信サービスを開始。現在では「ひかりTV」サービスとして300万人超の会員を集める売上800億円規模の企業を創り上げている。レーザーの技術開発の最前線は、映像配信ビジネスと、どう交錯するだろうか?
板東浩二社長(以下、板東) レーザー光の研究が進むと、どんなことができるようになるんですか?
中村修二氏(以下、中村) 宇宙旅行が可能になるかもしれません。レーザー光は直進性が高く、光の粒子には運動量があります。そこで、打ち上げた宇宙船に、地球の大気圏外からレーザー光をあてれば、宇宙船の推進力に変換できるんです。原理的に、宇宙探査機のスピードが光の速度ぐらいまで早くなることが、物理学者から提案されています。
また、水から発電できるようになるかもしれません。青色レーザー光の力で、普通の水に含まれる「重水素」と「三重水素」を超高温・高密度にすると、核融合反応が起きます。人工的に太陽を創り出すようなもので、使ったエネルギーより大きなエネルギーを取り出せるようになれば、水からほぼ無尽蔵のエネルギーが取り出せます。
板東 こういった話を真剣に追い求めてきたからこそ「20世紀中は実現不可能」と言われていた研究課題をクリアして、ノーベル賞をとれたんでしょう。何か、数年以内に実現しそうなことはありますか?
中村 例えば車のヘッドライトには、もう青色レーザーが使われ始めています。数年以内に、ヘッドライトには、かなり青色レーザーが使われるのではないでしょうか?