試験本番は
アスリートになる!?

佐藤 試験って、覚えた知識を披露する場。思い出す力、いわゆるアウトプットこそ重要だと私は思うんですが、意外にそう思っていない人が多いですよね。私は、テレビを見ながら、歩きながらでも「答えを思い出す」ということをやっていました。司法試験のときは、問題を見て一瞬で答えを思い出すという作業を、ひたすら繰り返していましたし……。

山口 それ、私もやりました!書くと時間がかかるから、とにかく問題だけ見て「論点、論証、結論、よしOK!」って。

佐藤 試験だからこそ、そこに特化した勉強が必要なんですよね。サッカーの試合の直前に、リフティングの練習はしないじゃないですか。もっと実戦に近い練習をやるはず。試験もそうで、本番のつもりで、問題を見てパッと思い出せるようにすることが大事。これって、インプットもしながら実はアウトプットもしているんですよ。「覚える力」と「思い出す力」を同時に養えると思います。

山口 入力の練習と出力の練習、両方したほうがいいということですね。

佐藤 おっしゃる通りです。この実戦の練習をしておけば、極端な話、理解していなくても解答できる。時間の節約にもなります。緊張すると頭が止まってしまうこともあるけれど、普段から訓練しておけば人より5分、10分早く解けるんですよね。

山口 私、試験の最中に悩んだり考えたりしたことがないんですよ。なぜかと言ったら、まさにその訓練してきたことを反射的にやっていたから。アスリートと同じですよね。こういう球がきたらこう打つ、みたいな。学者になるならともかく、「合格したい」「点数を取りたい」だったら、このやり方は確実に結果に結びつくと思います。

「真似る」技術は
社会に出ても生かされる

佐藤 いま山口先生も「アスリートと同じ」とおっしゃいましたが、勉強って実はスポーツに近いものがあると思うんです。スポーツも、最初から自分で考えず、真似ることから始めてそれを繰り返しているうちに覚えていきますよね。

山口 そうそう、フォームを作って繰り返し練習しますよね。

佐藤 最初からアクロバティックなことなんてやらないんです。なのに、勉強だけが「最初から考えなさい、アレンジを加えさない」って求められてしまう。でも、試験の問題だって、所詮は過去問の焼き直しじゃないですか。ちょっと角度を変えた問題が毎年出ているだけ。

山口 確かにそう。

佐藤 過去問10年分くらいを見れば問題の傾向もわかるし、出るところも解き方もわかりますよね。だから、無理して理解せず、暗記、つまり真似して覚えればいいんです。このやり方は、社会に出てからも応用できると思うんですよ。新人のときほど、最初から考えてしまうけれど、とりあえずは結果を出している先輩たちを真似ればいい。

山口 財務省に入ったとき、上司からいろいろな仕事を指示されたんですけど、「どうしてこういうふうにやるんですか?」と聞いたら、「できてから言え」と言われて(笑)。