「停滞ケース」では、為替の引き下げ競争、関税による地域のブロック経済化→自由貿易体制の崩壊にまで突き進むかもしれない。第2次世界前夜と同じ状況が再現されかねないが、このシナリオが実現する可能性は低いだろう。

 では、「いけいけケース」はどうか。トランプノミクスとよく比較されるのが、レーガン大統領(1981年~89年)が推し進めた経済政策である「レーガノミクス」。レーガノミクスも法人税の大幅減税と財政支出の拡大が柱だった。財政支出の中身はインフラ投資ではなく軍事支出だったものの、「意図せざるケインズ政策」とも評された。

 その結果として起こったことは、財政と経常収支の「双子の赤字」。海外からの資金で赤字をファイナンスするために、高金利と強いドル政策が採られた。だが、赤字の拡大によって、ドルの価値は維持できるのかというサステナビリティ(持続可能性)に対する疑問が国際的に生じ、ついに1985年に米国主導でプラザ合意が実現する。

 プラザ合意とは米英日独仏の先進5ヵ国がドル安政策への転換で合意した会議のことだ。これによって、当時1ドル235円だった円ドル相場は、わずか1年後には150円台になるという急激な円高に見舞われ、日本は円高不況に陥る。これに対応するため、日本では財政支出の拡大と超低金利政策が採られた結果バブル経済を生み出したことは、中高年の読者にとっては懐かしい記憶だろう。

 米国の研究機関によれば、トランプ大統領の財政政策がほぼ100%実現した場合、米国の公的債務のGDPに対する割合は、現在の約80%から26年には約110%へ、約30%も上昇すると予測されている。成長率も高まるから輸入も増え、経常収支の赤字も拡大することは容易に予想できる。

 双子の赤字に頼った成長はどこまで持続可能なのか。山田部長は「レーガン時代はまだ米国はいまよりも経済の実力があったので、4年~5年はもったが、今回は3~4年しかもたないのではないか」と予測する。

 トランプノミクスによる景気のブーム→双子の赤字の拡大→FRBの金融引き締めによる景気後退と急激なドル安への転換→世界不況という形で、歴史は繰り返されるのだろうか。