経営×経理

河江 我々が上梓した書籍『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』でも、そうした他のクラウドサービスとの連携によって生まれるメリットを強調しましたが、そうした既存業務のクラウド化は、どのくらいの期間をかけて導入していったのでしょうか?

高島 実は、最初に見せたいただいた会計ソフトの帳票内容は、売掛金がマイナス残高だったり、実際は存在しない現金が多額に計上されていたりと、ひどいものだったんです。なので、すぐにクラウド会計を導入できたわけではなく、過去の整理からスタートし、クラウド会計システムを整えるのに3ヵ月かかりました。その後、現場への導入に取りかかり、勤怠管理ソフトを入れることで今の形になったのですが、全部が整うまで半年くらいかかりました。パートさんも使う勤怠管理ソフトは、ある程度準備期間を設けて使い方に慣れておかないと活用できない恐れがありました。ですので、既存業務のクラウド化は、会計から入って、請求書などの売上を管理するものを入れ、最後に勤怠や給与を入れたという順番ですね。

河江健史(かわえ・けんじ)
1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。

河江 一度にすべてを導入したわけではないのですね、興味深いです。この順序は、関係するユーザーが少ないところから全社的に広げていっていますが、業務のクラウド化の一つのセオリーになりそうですね。

高島 この順番を推奨するには理由があります。まず、すべての中心になる会計を整えておくことは欠かせませんので、経理担当者がクラウドに拒否反応を示さないことは重要です。次に売上面に着手したのは、クラウド請求書に関係するのが従業員の一部に限られるからです。要は、その人にだけ教えればいい。しかし、勤怠については現場全員がわかっていないと機能せず、全従業員がスムーズに移行できるとは限らないので、ここを最後にするのです。

河江 なるほど。使う人が多い機能ほど後回しにして、社内のクラウド化を広げていくと。言い換えれば、導入への抵抗が少ないものから着手して慣れてもらうということですね。

高島 経理担当者など、クラウドの便利さを先に体験して慣れた人がいると、導入の後押しをしてくれる存在になります。効果から考えれば勤怠からやりたくなるのですが、そうすると最初に「味方」になってくれる人が少ないために、社内での導入プロセスがギクシャクする恐れがあります。特にOKK FOODSは従業員の平均年齢が高く、全員がITに苦手意識を持っていたようでしたので、導入には気を遣いました。慣れれば誰でも簡単に使えるとしても、まずは「使ってみよう」という気にさせるまでの持ち掛け方が重要になると思います。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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