石川県や長崎県産の
海産物までもが風評被害に
震災発生から1ヵ月、上海市場もその余波に襲われている。日本の食品販売をはじめとする物販業や、その食材を使っての飲食業は大打撃。現地でビジネスを展開する多くの日本人が頭を抱えている。
石川県と石川県漁業協同組合は今年2月、能登で水揚げされる冷凍スルメイカを中国へ試験的に輸出することを検討していた。国内の消費が落ち込み、価格低迷が続くスルメイカを上海の富裕層や日本料理店に売り込むのが狙いだった。
大々的に売り出そうとしていたその矢先、計画はつまづいてしまう。放射能漏れによる汚染問題で上海市工商行政局から、日本の魚介類は販売するなとの指導が行われたためだ。同漁協は「日本海は汚染されていない。風評被害にはショックを受けている」と話している。
日本料理などの飲食業も振るわない。特にここ数年にわたって人気沸騰中だった江戸前寿司が大きなダメージを受けた。「長崎から鮮魚が入れられず、定休日を設ける店も。実際に放射性物質でも検出されたらさらに経済的打撃は拡大するだろう」と現地の事情通は懸念する。
賃料高騰に風評被害が
加わってダブルパンチ
上海市民の所得や意識の向上を受け、ここ数年、日本の食品の安心・安全が評価され始めた。それに伴い、日本の食品を扱う売り場もこれまで以上に広がった。香港系のデパ地下もあれば、中国系国有大手が運営する売り場もある。非日系資本もこの日本食品の販売に商機を見いだす。
まさに「日本ブランド、今真っ盛り」だったのだ。だが、震災前から必ずしも好調とは言い切れない現状も浮かび上がっていた。