残り3000億円をどうやって稼ぐか――。
2008年8月期、ケチのつけようのない好決算だったファーストリテイリングに唯一の課題を挙げるとすれば、この疑問が浮かび上がってくる。
2008年8月期、同社は連結売上高5864億円(前期比11.7%増)、経常利益856億円(同32.7%増)でフリースブームに沸いた2001年8月期に次ぐ好決算だった。
なかでも海外ユニクロ事業が初の営業黒字に転じたことは大きい。米国が採算ベースに乗り、全体で売上高293億円、営業利益3億円と軌道に乗った。目標として掲げる2010年グループ売上高1兆円のうち、海外ユニクロ事業は1割の1000億円を稼ぐつもりだ。それに向けて、事業を加速させる準備がようやく整った。
国内ユニクロ事業は今期4623億円で、2010年には6000億円まで伸ばす。ユニクロ事業に限って言えば、2010年までに国内と海外の売上高合計7000億円が視界に入ってきたと言っていいだろう。
一方で残りの3000億円についての見通しは、未だ不透明感をぬぐいきれない。同社はM&Aのほか、コントワー・デ・コトニエなどこれまで買収してきた海外ブランド事業と、ジーユーなどの国内関連事業でその3000億円を稼ぐ腹積もりだ。
しかし、そのユニクロ以外の前期実績は売上高931億円。国内関連事業は、前期は唯一の営業損失を出した部門で、採算は改善しているとは言え、海外事業のように事業を加速度的に拡大する段階にはない。柳井会長兼社長はジーユーについて「商品、店舗オペレーションなどすべてを変える必要がある」(柳井会長兼社長)と課題を口にする。
そこで注目されるのがM&A。柳井会長兼社長は「3000億~4000億円ならすぐにでも出せる。世界的に株価が低迷する現状は絶好のチャンス」と積極的だ。しかし、相手あってのM&A。2007年秋のバーニーズ買収失敗からM&Aは行なっていない。「話は多く来る。グローバルに事業展開するためのプラットフォームとなる企業が買収対象」(柳井会長兼社長)と言うが、そうした買収先が2010年までに現れるのだろうか。
ユニクロ事業は国内、海外ともに順調だ。同社にとってM&Aと国内関連事業などの“ユニクロ以外”の充実が1兆円の目標達成と、グローバル企業となるための鍵になることは間違いない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)