「保険サービス」と「保険外サービス」は明確に区分できるか?
介護保険のサービスと介護保険でないサービスを組み合わせて提供する「混合介護」の解禁が近づいて来た。2月21日に政府の規制改革推進会議が「公開ディスカッション」を開き、同会議委員たちが厚労省の4人の課長と審議官たちに「なぜ、認めないのか」と迫った。
防戦に必死の厚労省側だったが、委員たちが提案する国のガイドライン(指針)作りには、及び腰しながらも完全な否定姿勢を採ることはできなかった。同会議は、今後、厚労省にガイドライン策定を求めていくとともに、6月にまとめる答申に盛り込む。
来春には、東京都豊島区で国家戦略特区を活用した「混合介護」が始まる。介護保険制度が民間企業の活力を積極的に導入する新たな局面を迎えた。現在の介護保険制度でも、混合介護は認められている。ただし、厚労省は保険サービスと保険外サービスを「明確に区分して」という条件を課している。
このため、訪問介護ヘルパーが時間をずらして両サービスを行うのはいいが、「同時一体的」には提供できない。例えば、利用者の分と夜間に帰宅する家族の分の食事を調理するには、利用者の調理を終えた後に、鍋などを洗い直してはじめから家族の分にとりかからねばならない。
一緒に調理すると「同時一体的」となり介護保険の報酬請求ができない。介護家族にとっては、一緒に調理してもらえればかなりの負担軽減になるはず。こうした「不合理」を改め、混合介護を推進しようと規制改革推進会議が開いたのが21日の「公開ディスカッション」であった。
開催場所は首相官邸と道路を挟んだ内閣府の地下ホール。ロの字型のテーブルには、13人の規制改革推進会議の委員がL字型に並び、向かい合うように厚労省老健局から振興課、介護保険計画課など4課の課長たちと坂口卓・大臣官房審議会が席に着いた。もう一方のテーブルには、この日の発言者である東内京一・和光市保健福祉部長、香取幹・日本在宅介護協議会常任理事などが着席。
まず、東内部長が、和光市では訪問介護ヘルパーによる「共食」の自費サービスや年末の大掃除などきめ細かな保険外サービスを実施しており、混合介護は必要と強調した。ただ、導入の際には、「ケアプランできちんと位置付け、地域ケア会議の支援範囲に置くこと」と条件を付けた。保険者が主催するする介護サービス事業者連絡会でルールとマナーを作るとし、自治体主導の枠組みに拘った。保険者機能を前面に出して事業者をコントロールする、いかにも和光市らしい考え方だ。
次いで保険外サービスの手法について意見陳述したのは香取さん。日本在宅介護協会が公表している(1)パーソナルスタッフ制度と(2)時間帯指定制度、それに、(3)保険内外サービスの同時一体的提供、この3点を解説した。