なぜ、政府と東京電力の対応は
「不誠実だ」と感じられるのか
東日本大震災により、福島原発の事故が発生してから、すでに1ヵ月以上が経過している。この間、原発事故の安全性に関する発表はことごとく覆され、ついには、チェルノブイリの原発事故に並ぶ「レベル7」へと引き上げられた。
しかし、福島の原発事故はまだ終息に向かっているわけではなく、今後さらなる被害拡大へと突き進む危険性も残っている。
その間、国民の多くが政府ならびに東京電力の対応に関して、何となく「不誠実なもの」を感じているはずである。そこで今回は、政府や東電について「どこに不誠実さを感じさせる原因があるのか」を、探ることとした。
考察に当たっては、「社会的責任」(ISO26000)という視点を取り入れてみた。「社会的責任」(ISO26000)では、社会的責任に関する原則として、(1)説明責任、(2)透明性、(3)倫理的な行動、(4)ステークホルダーの利害の尊重、(5)法の支配の尊重、(6)国際行動規範の尊重、(7)人権の尊重の7つを明示している。
このうち、今回の原発事故への対応と関連が大きいと考えられる「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」の各項目に関して、具体的な検討を行なった。その結果は、以下のとおりである。
(a)「説明責任」に関する検討
(原則:組織は自らが社会及び環境に与える影響に説明責任を負うべきである)
ここで説明責任とは、組織が何か決定を行ない、行動を起こすときに、その決定や行動により影響を受ける人々や社会一般に対して、決定や行動の結果どのような影響が生じるかを説明することを意味する。
今回の原発事故の対応に関しては、連日の記者会見において、どのような決定を行なったか、ないしはどのような活動を行なうかについては報告されるが、その行動によって生じる「社会に与える影響」が説明されることはない。