3月6日、米GM(ゼネラル・モーターズ)と交渉を進めていた仏PSA(旧プジョー・シトロエン)は、GMの欧州子会社独オペルと姉妹ブランドの英ボクスホール、GMフィナンシャルの欧州事業を総額22億ユーロ(約2650億円;1ユーロ=120円45銭換算)で買収することに合意したと発表した。GMは赤字が続いていた子会社のオペルとボクスホールを売却することで、全体の収益力向上に結びつける。

 オペルは、ドイツの名門企業。日本でもヤナセが1992年に独VW(フォルクスワーゲン)の輸入権を剥奪された際に、オペルに切り替えて販売を拡大した経緯がある。PSAは直近の総販売台数315万台から、オペル・ボクスホールの約100万台を加えると、世界販売で430万台規模となる。これにより、欧州市場におけるシェアが16%まで上昇、仏ルノーを抜き、欧州でVWグループに次ぐ2位となる。一方、GMは欧州からの撤退により、昨年の年間世界販売台数で3位の座から転落することになりそうだ。

 GMは欧州事業を担ってきたオペルの不振から売却を検討していたことに加え、英国のEU離脱で姉妹ブランドのボグスホールも売却に踏み切ったようだ。今回のGMの決断は規模よりも収益性を重視した欧州子会社の売却ということになる。一方のPSAは、同国のライバルであるルノーへの対抗も睨み、グループ力強化に向けて名門オペルを傘下に置いた動きといえよう。

世界の自動車勢力図はビッグ3時代から
トヨタとVWの時代へ 

 世界の自動車勢力図を振り返ってみよう。20世紀では日本が欧米対抗に割って入る格好となったが、米ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)が世界をリードしてきた。それが21世紀に入ると、世界を襲ったリーマンショックの影響で米ビッグ3が衰退し、日本のトヨタとドイツのVWが世界覇権を争う構図に変わった。

 とりわけ昨年から今年にかけて日本車の再編が進む一方で、GM、フォードの米国勢が復活し、新興テスラも台頭してきた。また、欧州市場の回復トレンドの中で、欧州勢もドイツ、フランス、さらにイタリアの自動車各社による合従連衡が加速するのではないか。