今どきの若手は同期を「さん付け」
SNS世代の仲間感覚
先日、ある企業の若手社員の訪問を受けた。2人の男性がやってきたのだが、聞けば入社3年目の「同期」だという。しかし、2人が話すところを見ていると、どうも違和感がある。彼らはお互いを「さん付け」で呼び合っているのだ。失礼を承知で、あえて聞いてみた。
「2人は仲が悪いの?」
彼らは「いえいえ、良好ですよ。いい仕事仲間です」と笑って答える。その言葉には何の含みも感じられない。きっと、本当にいい関係なのだろう。となると、オジサンとしては余計に不思議になる。
「それなら、どうして『さん付け』してるの?」
なぜ私がそんなに不思議がるのか、分からない人もいると思う。
それでは説明しよう。私たちオジサン世代にとって同期というのは家族のような、ライバルのような、友達のような、特別な存在だ。入社早々、新人歓迎会で通過儀礼としての「芸」を一緒にやらされたり、「新人研修」で膨大な知識を詰め込まされて一緒に苦労したり。そういった悲喜こもごもを通して同期との関係はより深く、より濃密になっていく。
家族に「さん付け」する人はめったにいないだろう。私にとって同期への「さん付け」は、それくらい不思議なものなのだ。だから、さらに彼らに聞いてみた。
「君たちは『さん付け』しない人っているの?」
すると、彼らは中学・高校・大学の仲間には「さん付け」しないと言う。
なるほど、私たちの時代はSNSはおろかメールすらなかったから、就職すると学生時代の仲間とは一旦疎遠になるものだった。物理的に距離が離れるし、必要がなければ連絡はしない。すると、数年に一度あるプチ同窓会のような場で会う以外、彼らの近況を聞く機会もなくなる。
結果、就職すると「社縁」にがっちりと組み込まれる。特に、就職をきっかけに上京したり、配属先が遠隔地になったりすれば、学生時代の知り合いも周りにいなくなる。「共同体」の底辺での下積み時代を共にする同期は、唯一ホッとできる相手だ。だからこそ、同期への「さん付け」などあり得なかった。これは、SNSが浸透した時期にすでに就職していた30代以上のビジネスマンなら、共感してもらえるところだと思う。