覚悟が人を育てる

 システム機器部の谷口透は、2017年に副課長格へ昇格しました。
 当社の場合、副課長に上がるのは40歳前後が一般的ですが、彼はまだ31歳。異例の抜擢です。私が彼を昇格させたのは、成長意欲が高いからです。

「私はかつて大手メーカーにいましたが、会社の規模が大きいと、包括的に仕事をすることができません。けれど当社では、個人の意思を尊重して任せてくれるので、お客様にどのような形で販売していくか、どのような戦略で臨むか、自分で考えられます。自主的に仕事をするには、自分で考えないといけませんが、自分で考えるからこそ成長できるし、面白い仕事ができるのだと思います」(谷口)

 日本レーザーには、社内で自己実現できるよう「チャンス・アンド・チャレンジ」の企業風土をつくっていますが、まさに谷口は、チャレンジしていくこと自体に生きがいを感じています。

「個人的な目標として、『今までの担当者がやっていない仕事で成果を出したい』『顕著な成果を出して自分の足跡を残したい』と思っています」(谷口)

 2016年に、谷口から「新しい装置を扱いたい」という提案がありました。そのためには、まずデモ機を購入しなければなりません。

 お客様(見込客)にデモ機を操作していただき、イメージどおりの測定が行えるかを確認していただくためです。

 デモ機は、1000万円以上もします。
 もし買い手が見つからなければ、会社は1000万円の損失になる。
 けれども私は承認しました。

「事前に、『購入意思の高いお客様がいる』という情報を得ていたので大丈夫だとは思っていましたが、それでも『コケてしまったらどうしよう』というプレッシャーはすごくありました」(谷口)

 結果的に、新しい装置は、堅調に売上を伸ばしています。

 彼のチャレンジが実を結んだ理由は、彼が「お客様の動向に注意深く目を向けたこと」「問題意識を常に持っていたこと」「『このままでいい』と考えたり、現状維持に甘んじなかったこと」などが挙げられますが、いちばんの理由は、「並々ならぬ本気の覚悟を持っていたこと」です。

 彼は私に、

「もし、この装置が売れなければ、自分は会社を辞める」

 とまで言い切ったのです。

 私が背水の陣で日本レーザーの再建に取り組んだように、彼も自らの退路を絶って、チャレンジした。その強い覚悟が、結果を引き寄せたのだと思います。