誰しもが求められる実行する力

 戦略の重要性はお分かりいただけたと思いますが、戦略は、立案すれば勝手に実行されるというものではありません。たとえば過去の成功体験が強い企業などでは、新しい戦略が打ち出されても、過去に引きずられて、新しい試みや思い切った行動がとれなくなるものです。その結果、打ち出された戦略そのものは適切でも、人が動かない結果、環境変化に対応できず、競争力を失ってしまうというケースがよく見られます。

 つまり、適切な戦略を打ち出すだけではなく、組織としてスピーディに行動しなくてはならないのです。そこで必要になってくるのが、リーダーの存在です。特に重要なのはトップのリーダーシップですが、トップが優秀というだけでも組織は勝てません。戦略実行の担い手はミドル・マネジメントだからです。

 企業目的や自社の立場を理解し、時には自ら戦略を考え、実行に移すという一連のプロセスを遂行すべく、1人でも多くの人間が当事者意識を持ち、リーダーシップを発揮する必要があるのです。

 幸い、かつては属人的な資質とみなされていたリーダーシップも、近年では学びうる行動様式と考えられるようになってきました。つまり、その気さえあれば、誰しもがリーダーシップを発揮できるのです。

 『グロービスMBAリーダーシップ』では、リーダーシップ論の変遷や各論も紹介しつつ、後半では「実践編」ということで、問いかけ方式も交えながら、リーダーシップ実践のヒントを提供しています。ぜひリーダーとして一皮むけるためにも読んでみてください。

数字がわからなければ、経営はわからない

 ファイナンス(特に企業財務と呼ばれるコーポレイト・ファイナンス)も、グローバル競争に勝ち残る上では非常に重要な経営領域です。それは、特にアメリカ企業において、CEO、COOに次ぐ第3のポジションとしてCFO(最高財務責任者)が置かれているという事実からも推測がつきます。

 たとえばどれだけ戦略的には正しかったとしても、買収先企業の企業価値評価を間違え、高値掴みをしてしまったり、資金調達の方法を間違えたりしては、企業価値は下がっていまいます。あるいは、本来なら投資できた他の重要プロジェクトをそのおかげで見送らざるを得なかった結果、長期的には負けてしまう、という事態も起こるかもしれません。

 また、昨今の不確実性の高い時代には、「リスク」というものを正しく認識する必要がありますが、これはファイナンスの基礎的素養でもあります。戦略の妥当性を投資家に説明するIR活動もファイナンスの一部です。このように、さまざまな要因を介して戦略とファイナンスはつながっています。

 企業財務のエッセンスは、突き詰めれば以下の式を理解することにつきます。

(『新版グロービスMBAファイナンス』viiページより引用)拡大画像表示

 この数式を見ただけで数学の不得意な方はアレルギーを感じられるかもしれません。しかし、この時代にファイナンスが分からないということは、経営が分からないと言っているのと同じことです。それでは、ある程度の仕事は任されても、経営という仕事は決して任されません。

 将来、経営に携わりたい方は、食わず嫌いは止め、ぜひ早めにファイナンスを勉強しましょう。『グロービスMBAファイナンス』は基礎から応用へと、初学者の方でも徐々に理解が深められるよう工夫しています。この機会に是非ご一読ください。