厳罰化ではなく、非犯罪化を。「北風と太陽」の童話で言えば、北風ではなく太陽を。この国際的な傾向に、日本は乗り遅れていることを松本さんは指摘する。国際的に見て、日本は違法薬物の生涯経験率が非常に低い。「薬物使用に関する全国住民調査」(国立精神・神経センター精神保健研究所/2005年)によれば、違法薬物の生涯経験率は、アメリカが46%、タイ16%、日本は2.4%だ。だからこそ、厳罰化を問題視する空気が、これまで生まれづらかった。

「(生涯経験率を見れば)『覚せい剤やめますか、人間やめますか』ってコピーはそれなりに効果があったと言えるかもしれない。しかしだからこそこの国で一度薬物を使うと、本当に孤立してしまうのです。オバマ前大統領のように、若い頃やんちゃしましたけど大統領になったなんていう話は日本ではありえない」(松本さん)

 オバマ前大統領は大麻吸引がたびたび報道され、自身もインタビューで「吸ったことがある」と認めている。また、「健全な行為ではないが、アルコールほど危険ではない」とも語っている。こういった海外の風潮に比べて日本は違法薬物の取り締まりが厳しい一方で、アルコールには非常に寛容という指摘がある。

依存患者を孤立させてしまう懸念
コメンテーターの偏見、やめて

 松本さんが繰り返し訴えるのは、薬物を使った人をバッシングし孤立させることこそ、依存症患者が再度薬物を使う可能性を高めてしまうということだ。「アディクション(依存)の反対はコネクション(つながり)」と松本さんは言う。

 薬物に関する専門知識を持たないコメンテーターの一言が、偏見や誤解を助長することもある。昨年、元俳優の高知東生さんが覚せい剤取締法と麻薬取締法違反容疑で逮捕された際、ワイドショーではあるコメンテーターが、高知さんが逮捕時に「ありがとうございます」と言ったことを批判した。

「『ありがとうございます』なんて軽い言葉だ、ふざけるなと。でも薬物依存を治療する側からすると、これは重い言葉なんです。薬物をやっと止められるという気持ち、悩み苦しんでいたことの表れです。コメンテーターの方には専門的な知識がないから発言を責めることはできないけれど、こういう発言があったときに、専門家がその場で『それは違うんです。これは重い言葉なんです』と言うことができれば、依存症への理解度はかなり変わります」(松本さん)