転職後の担当第一弾は
意外な?作品に

――アップルシードに移られて、最初に担当された企画は何だったんですか?

宮原 初めは社長の同行という形でが主だったんですが、一番最初にその同行で進んだ企画には大橋禅太郎さんの『すごい会議』第2弾などがありました。その後、出版社時代から個人的に知り合いだった各社の編集者さんにコンタクトを取ったりしながら、徐々に一人で動き始めました。

 自分が主導でという企画だと、ダイヤモンド社さんから出していただいた『指でなぞる大人のピアノ』(元吉ひろみ著)がかなり初めのほうでしたね。もともと弊社内に著者の元吉さんからの企画があって、それを御社に提案させていただいたものでした。

 

――企画内容も持ち込み先も一見イレギュラーですが?(笑)

宮原 たしかに(笑)。以前にいた会社で、アップルシードと一緒に作った『聴診器ブック』という、そのまま聴診器つきの書籍が好評を得ていたこともあって、そういったものにハマっている時期でしたね。この企画も「何か付録をつけよう」とちゃんと音が出るコンパクトな鍵盤を真剣に探したり、付録まで込みの企画で考えていました。

 結果的に音の出ない紙の鍵盤とCDを付けることになったのですが、価格設定という意味でも、アナログに親和性の高い層がターゲットだったという意味でも、それが良かったのかなと思います。タイトルに「60歳からの」とある企画意図どおり、シニア層を中心に好評をいただき、脳トレといった側面からも売れて、増刷を重ねることができました。さらに続編を作ることもできました。

――そこから今に至る数々のヒットを含む担当書籍が生まれていったわけですね。この後さらに具体的なエピソードをうかがっていきたいと思いますが、出版社に務める編集者と作家のエージェントのお仕事、両方経験されたうえで、エージェントの醍醐味とは何でしょうか?

宮原 そうですね、いろいろあるのですが…。一般的に編集者さんと著者さんの関係は1対1だと思います。そこに3人目として加わるのがエージェントです。3人目の存在であるエージェントとして、1対1で行き詰まったり、どちらかに不満があったりしたときに、より良い本を作るために上手くバランスが取ることができ、良いコラボレーションができたときはうれしいですね。

 作家さんのエージェントなので、基本的には作家さんに寄り添って、作家さんの立場にたつのがエージェントだと思うのですが、良い方向に企画を進めていくためには、はっきりと意見を言うこともあります。「作家さんに寄り添う」のは当然ですが、それ以上に「本に寄り添う」。そのスタンスでいたいと常に思っています。
 

「作家さんに寄り添う」「本に寄り添う」。どちらも、エージェントさんならではと言えますが、一方で編集者にとっても忘れてはならないキーワードだと感じました。次回は、さらに具体的な担当書籍を挙げていただき、それぞれのエピソードを教えていただきます。お楽しみに!

宮原陽介(みやはら ようすけ)
作家のエージェント。
1973年生まれ。大学卒業後、株式会社日本実業出版社に入社。広告部に配属され、広告主や広告代理店への営業を担当。後に書籍編集部に異動。
2007年に株式会社アップルシード・エージェンシーに転職。現在に至る。
所属する約80名の作家と企画を考え、各出版社に紹介し、制作をサポートするほか、新人作家の発掘も手がける。
年間に担当する書籍はビジネス書やサッカー関連本など15~20点。
Twitter: @ym619